はじめに
MBAの名授業シリーズとして、今回は藤村博之教授による人的資源管理論の最初の授業を取り上げたい。2年前のメモをベースにしたものだ。藤村教授の授業は当時初めてだったので、どんな講義かとちょっとドキドキしたが、興味深い内容だったことを思い出した。大学院の2年目は藤村教授のゼミ生となり、大変お世話になった。修論の内容については別途取り上げたい。
講師は藤村博之教授
名古屋大学を卒業後、京都大学経済研究所に移り、滋賀大学で助教授から教授となり、1997年から法政大学経営学部の教授をされている。1979年から1981年までの2年間は政府奨学生として、ユーゴスラビアのザグレブ大学に留学されている。なので、日本代表のサッカー監督に就任されたイビチャ・オシムが話す言葉(クロアチア語)はほぼ理解できるという。すごい。その後、ドイツにも留学されている。京都大学の博士論文(経済学)は『ユーゴ労働者自主管理の挑戦と崩壊』だ。第一回の今日は、日本企業の組織と人事の課題。第二回は雇用関係、第三回は退職管理、第四回は人材育成、第五回は評価と目標管理、第六回は報酬管理、そして、最後の第7回は労働時間管理だ。藤村先生からの講義と、受講生によるディスカッションを混ぜて進めるので眠くない。面白い。
出典:外国人材の力を最大限活用するために(仮訳) | October 2014 | Highlighting Japan
人ざい
一般には「人材」と書くだろう。目指すべきは「人財」か。でも組織には存在するだけの「人在」もいるし、マイナスの効果を発揮する「人罪」もいる。もう用無しの「人剤」もいるかもししれない。しかし、人がどの人ざいになるかは、個人の問題だけではなく、置かれる環境にも依存する。例えば、上司Aとの相性は抜群に良かったのに、上司Bのもとではダメだったり。組織Xでは輝く人財だったけど、組織Yではいるだけの「人在」になることもある。また、全員が人財になるわけでもない。これはいわゆる「働きアリの法則」だ。働きアリも全員が働いている訳ではない。そして、働きアリだけ、もしくは休んでいるアリだけを集めても、同様の状態になる。つまり、これは休んだり、一見意味のないことも、意義があるということだろう。
出典:働きアリと人間の共通点 | 面白情報広場♪
スプートニックショック
米国は敗北から学ぶ。例えば、1957年10月にソ連が人工衛星の打ち上げに初めて成功したことは、米国に大きなショックを与えた。これをスプートニックショックと呼ぶ。同様に日本経済が絶好調でJapan As No.1ともてはやされた時代には、実は米国は日本の成功の秘密をよく調査・分析した。米国のビジネススクールでは日本企業のケーススタディが人気だ。
出典:スプートニク・ショック – Wikipedia
人的資源管理論
1980年代以前は、労務管理や人事管理と呼ばれた。しかし、いわゆる経営の資源として人、物、金、情報の4要素が経営の重要な資源と考えられるようになった現在では、人的資源管理論と呼ばれることが多い。講義ではエドワード・P・ラジアーさんとマイケル・ギブスさんの共著の人事と組織の経済学が教本として指定されている。でも、購入すると結構高いので、図書館で借りてみよう。
出典:amazon
日本の社会の課題
人的資源管理を議論する上では、日本の社会情勢がベースになる。高度成長期における人的資源管理の課題と現在の課題は全く異なる。現在の社会情勢では、やはり、人口減少と高齢化と少子化の3つが重要課題であることはまあ間違いない。総務部統計局では、平成元年から平成30年における総人口及び総人口に占める0~14歳、65歳以上及び75歳以上人口の割合の推移を集計していて、下のグラフのように、平成30年には65歳以上の比率が28%を超えている。
出典:https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1191.html
日本の適正人数
日本の人口減少はどこまで進むのだろう。どこかで着地点があると思い、藤村教授に2100年時点での人口をどう思いますか?と質問すると、藤村教授が考える日本国民の適正数は7000万人だという。いい線だと思う。実際、国連が発表した2100年の人口予測では8500万人となっていて、人口問題研究所が予測する6000万人よりも多い。人口は現在減少傾向だけど、日本における適正な人口について政府や国民で納得して、適切な施策を講じればその適正な人口に向かうと思う。
出典:https://www.reddit.com/r/newsokur/
グループ討議
学生でのグループディスカッションのテーマが日本の社会の課題を出し合えというものだった。私は非正規社員の比率が増えていて、それが所得の低下や、企業の成長力の低下につながっていると考えてそのように発表した。それ以外にも、社員は仕事を選べないという課題を指摘する声や社員の評価が難しい、労働生産性が高い社員は残業せず、逆に労働生産性が低い社員は残業して給与が増えるという矛盾を指摘する声、さらにはハラスメントや逆ハラスメントの問題を指摘する声もあった。人的資源管理では人を扱うため、課題も広範囲だけど、議論は尽きない。
講義の課題
来週までに、人事と組織の経済学の指定された章(28ページ)を読んで、その感想をA41枚ほどにまとめるのが課題だ。内容は適任者の採用についてだ。キーワードはスクリーニングとシグナリングだ。最近ではビッグデータを利用したスクリーニングも始まっている。スクリーニングとは情報を持たない人が選別し、シグナリングは情報を持つ人がコストをかけてタイプを示すシグナリングを出す。
出典:https://slidesplayer.net/slide/11138485/
まとめ
授業の当日は、ワールドラグビーで日本がアイルランドに逆転勝ちするという快挙が起きた(2019年9月28日)。オシム監督が選手に何度も言っていたのは自らの頭で「考えろ」だったという。指示待ち人間ではダメ。自分で考えて、周りと連携して、状況を判断して行動する。ラグビーの快進撃はこれから始まった。オリンピック&パラリンピックが実行されるのか、中止されるのか予断を許さない状況だが、個人的にはコロナ禍をスポーツの力で吹っ飛ばして欲しいと思う。
以上
最後まで読んでいただきありがとうございました。参考になる点が少しでもあれば、いいね(ハートマーク)をクリックして頂けると励みになります。
拝