はじめに
特別講義(メディアコンテンツ)の第1回講義については、以前投稿した。4月15日の第2回講義では、NTTドコモの専門家による「メタバースで変わるビジネス」と題して、メタバースとは何か、メタバースを実際に運営して感じたことなどを率直にお話いただいた。登壇いただいた赤沼純シニア・マネージャーはNTTドコモのビジネスクリエーション部XR推進室でまさにメタバースを推進されている専門家だ。なお、いつもの記載しているが、これは講義メモではない。講義を拝聴して興味深く感じたことをネットで確認しながらまとめたものだ。なので、内容に問題があれば文責は自分にあり、もし内容がよければそれは講義が良かったためだと思う。
ゲスト講師はNTTドコモの赤沼純さん
略歴を拝見すると、1997年にNTTドコモに入社してiモードやアライアンスなどを担当した後、2006年にはリクルートに転職され、2009年にレコチョク、2012年にアマゾンジャパン、2015年に楽天(楽天モバイル)、2018年にカプコン、そして、2020年からNTTドコモに復職されている。ほぼ3年ごとに転職されて多彩な経験と経歴を重ねられている。
(出典:Markezine)
NTTドコモは3月31日よりメタバース提供開始
2022年3月31日からNTTドコモはマルチデバイス型メタバース「XR World」を提供開始していた。ほぼ2週間の提供実績をもとに生々しいお話を伺うことができた。同社が提供するXR Worldは、ウェブブラウザから参加できるバーチャル空間だ。
(出典:NTTDoCoMo)
そもそもバースとは・・
なぜメタバースが騒がれているのか?
そもそもメタバースという用語を初めて使ったのは、SF作家のニール・スティーヴンスン氏(1959年10月31日生)だ。1992年に出版された小説『スノークラッシュ(Snow Crash)』で使われた造語だ。スティーヴンスン氏が1999年に発表した小説『クリプトノミコン(Cryptonomicon)』では、架空のスルタン国キナクタに地下データヘイブンを建設し、電子マネーとデジタルゴールド通貨を使った匿名インターネットバンキングを促進する。これが後のビットコインに影響を与えたと指摘する声もある。一度読んでみたいものだ。スティーブンソンは、小説の中でメタバースを「3D仮想空間で仕事、遊び、買い物、会話などの日常生活の全ての活動を可能とするプラットフォーム」と定義している。恐るべき慧眼だと言える。
(出典:DIGIDAY)
Web3.0
さまざまな定義があるようだが、Web1.0は初期のWWW、Web2.0が現在までのインターネット、Web3.0はNFTや分散型ブロックチェーンをベースとするこれからの新しい概念のプラットフォームだ。あらゆるコンテンツがNFTにより資産化されることで、その空間の中でビジネスが成り立つようになる。Web3.0により、現実の世界と同等かそれ以上のインフラに進化する可能性と期待がある。
(出典:COINTELEGRAPH)
メタバースの未来
メタバースが目指すことは、リアルな物理世界でできることを全て仮想空間で実現することだ。そして、仮想であるが故に、リアルの世界以上のことが実現できる。そこに生活するのは、リアルな自分ではなく、バーチャルなアバターであり、そこで使われる通貨はリアルなドルや円ではなく仮想通貨だ。これは個人的な感想だけど、メタ(旧Facebook)は、Libra構想をぶち上げて、頓挫したが、リアルな世界で使う通貨ではなく、メタバースで使う仮想通貨としてプロジェクトを打ち出せば、中央銀行や金融機関から敵視されることは無かったのではないか。そのように考えているのかどうかは不明だけど、メタは仮想空間で利用できる仮想通貨の開発を検討しているという報道もある(参考)。これは要注目だ。
(出典:FT)
実際にメタバースを運営してみたら・・
メタバースの構成要素
赤沼講師の話に戻そう。メタバースを運用する上で、必要な要素は何か。それはコンテンツを体験する空間と、空間上で自分の分身となるアバター、友人など他の人とのコミュニケーション、そして価値をうみ、経済活動を行えるエコシステムの4つだという。任天堂が提供する「あつまれどうぶつの森」は国内で1千万本以上、世界では3,700万本以上販売されているヒット作だけど、これもメタバースの一種とかもしれない。メタバースは仮想の世界なので、国籍もないし、人種差別もない。性別や年齢もアバターの個性のもとではないも同然だ。これも個人的な妄想だけど、子供たちは小学校に行って勉強するのと同じように、アバターの世界でバーチャルな塾で勉強したり、遊んだりするようになるのだろうか。
メタバースの事例
下の図に示すように、さまざまなメタバースの事例がある。リアルな世界は一つだけど、バーチャルな世界は一つではない。アバターとメタバースの関係は1対1なのだろうか。同じアバターが複数のメタバースを行き来することも可能なのだろうか。寝たきりになっても、アバターがいろいろな世界で活躍するような世界観もありうるのだろうか。まだまだ全貌は見えない。
(出典:note)
空間制作 ≒ 街づくり – 物理的制約 x 処理能力
空間作りは、リアルな世界の街づくりによく似ている。でも、そこには物理的な制約はない。ただ、現在の処理システムの性能では、一箇所に100名程度なら臨場感のある処理が可能だけど、1000人とか1万人になると処理能力を越える事態になる。リアルの街づくりとは異なる難しさやこだわりが必要だ。しかし、コンピュータの処理能力は日進月歩にこれからも進歩し続ける。個人的な妄想だけど、レイ・カーツワイルが提唱するシンギュラリティは、もしかするとリアルな空間よりもリアルなバーチャル空間ができて、リアルな空間で過ごすよりも、バーチャルな空間で過ごす方が快適な世界なのかもしれない。
メタバースで起こる嫌がらせ行為
リアルな世界で起こるイジメや嫌がらせは、生物としての人間の本能に根ざしているのだと思う。メタバースの世界でもやはり同様に起きるようだ。LINEが普及して、LINEによる既読無視や、未読無視などのトラブルが広がったりしたが、同じようなことはメタバースでも起きるのだろう。なぜなら、現在のいじめの定義では、いじめられたと被害者が感じたらそれはいじめとなる。被害者合戦に発展したりしないのだろうか。
(出典:YouTube)
注意すべき法制度
メタバースが健全に構築、運営されるには、さまざまな対処すべきポイントがある。それが次の六点だという。
・ユーザへの影響
・著作権・肖像権
・ユーザ同士のトラブル
・ハードウェアの安全担保
・意匠権・建物の肖像権
・個人情報の保護
技術、ビジネス、法律ルール
下の図はメタバースとは関係ないけど、コンセプトが同じなので引用させていただいた。大事なことはメタバースを支える技術と、メタバースで実現されるビジネス、そしてこれらを規制する法律の3つがバランスよく機能することだ。
(出典:応用脳科学コンソーシアム)
まとめ
今回は、コンテンツ業界を知り尽くしたゲスト講師による講義だった。実際にメタバースを立ち上げて運用も開始しているので説得力がある。今後、市場のデファクトとなるようなメタバースを提供するのはどこになるのだろう。「あつ森」もメタバースの一種とされるが、任天堂も一石を投じるのだろうか。楽しみしかない。ただ、メタバースが健全に発展していった場合には、国の概念は一体どうなるのだろう。ITの技術の進歩についていけないと感じることはないけど、メタバースが発展・拡大した時の世界観がイメージできない。イメージできない時は、既存の価値観に既得権益を感じていて、それを失いたくないケースが多い。もしくは、ザックバーグのように既設の社会的な枠組みをぶっ潰すつもりでプロジェクトを立ち上げた人間が成功するのだろうか。
以上
最後まで読んで頂きありがとうございました。
拝