脳型情報処理機械論#1-1(脳の機能と仕組みを考える)

はじめに

昨日は、科目履修生として受講した時の感想を中心に投稿した。流石に東大の大学院の講義を受けるような学生なので、優秀な方が多いのだろう。でも、自分は自慢ではないが、化学は苦手だったし、生物の授業もまともに受けたこともない。まして、生物の細胞で電気信号がどのように生成・伝達されるのかなんて、昨日の講義を受けるまで聞いたことも、考えたこともなかった。しかし、調べて見ると、高校の生物の教科書に書かれているレベルの話だったようだ。恥ずかしい(涙)。脳の構造や仕組みをAIに活用しようとすると、化学、生物、電気、情報の知識が必要となるということか。しかし、そんなオールマイティな人間はいるのだろうか。東大の講義を受けるような人の中には、そのような優秀な人が多いのだろうか。ただ、教授が質問はないかと聞かれたら、なくても挙手しろとMBAの時代に叩き込まれたので、ついチャットで低レベルの質問をしてしまった。一方通行の講義より、双方向の講義の方が楽しいと思うのは自分だけだろうか(汗)。また、調べるほどに奥が深く、幅が広い。とても1回の投稿では収まりきれないので、次の2つに分けて投稿したい。
その1:脳に関する講義(⇨ 今回の投稿)
その2:ニューロンに関する講義(次回の投稿

疑問点

講義を受けて感じた疑問は次の2点だった。今回の講義では、少しヒントを貰った感じだけど、自分自身が納得するには、もう少し調べて理解する必要がありそうだ。

疑問1:電気はどこで作るの?どこで貯めるの?

電気ウナギは体内で電気を生成する。これは攻撃的な利用だけど、生物の多くは神経を持っていて、その神経には信号が伝達される。電気信号から化学信号に変換すると後で知ったけど、もし電気信号を伝達するなら、その電気信号はどこで生成するのか。また、どこかで電気をためているのか。そんなことを知りたかった。まだ、よく理解できていないけど、どうもイオンチャネルというところでカリウムイオンやナトリウムイオンが細胞内外を出たり、入ったりすることで電気的な勾配(つまり電気)を発生させているようだ。この辺りは、次回の投稿で解説したい。

疑問2:性別と脳の構造の関係は?

今回の抗議でも左脳と右脳に分かれていて、右眼の信号は左脳へ、左眼の信号は右脳へという説明があった。でも、なぜそんな風に交差しているのか。また、左脳と右脳を結ぶ脳梁が女性は太く、男性は細いと聞いたことがある。では中性的なジェンダーはどうなっているのか。世の中には地図の読めない男性も、人の話を聞かない女性もいるだろう。色々と研究されているようだ。また、調べて別に投稿したい。
(参考:男性脳・女性脳とジェンダーの関係

脳について

脳の構造

脳は古い旅館のようだと言われる。つまり、古くから伝わる母屋があり、増設した部屋があり、新しく追加した新巻がある。それぞれに機能があり、それぞれが繋がっている。脳の構造は下の図に示すように、循環や呼吸の制御、自律神経の中枢である「延髄」がある。プロレスの延髄キックは非常に危険だ。この延髄の近くには、平衡や姿勢の調整、運動の学習などを司る「小脳」がある。いわゆるバランスが良いとか、運動神経が良いのはこの小脳が優れているのだろうか。脊髄と小脳と間脳を結ぶのが「中脳」だ。人間の場合には、かつて中脳で司っていた機能の多くは大脳に移るので小さくなる。中脳と大脳の間にあるのが、臭覚を除く全ての感覚を中継する間脳だ。そして脳の多くの体積を占めるのが運動野、視覚野、言語野などの諸機能の中枢である「大脳」だ。神経には中枢神経系と末端神経系がある。中枢神経系は脊髄から延髄、橋、中脳、小脳、間脳を経由して大脳に繋がる。

(出典:Higuch鍼灸院

4つの大脳皮質

大脳とは何かを説明する場合の定義がいくつかある。今回は外見でわかる構造から脳葉(Cerebral lobes)、脳回(Gyrus)、脳溝(Sulcus)に分類する。ヒトの大脳半球の表面を覆う大脳皮質は、脳回と脳溝があり、外側溝、中心溝、頭頂後頭溝の3つの脳溝を基準する。大脳皮質(Cerebral cortex)は、大脳の表面に広がる1.5mmから4mmの薄い灰白色の層だ。大脳半球は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つの脳葉に分けられる。

(出典:頭頂葉

脳の機能局在(優位半球)

大脳は、場所によって対応する機能が決まっている。例えば、前頭葉はものを考えたり、運動の指令をする。頭頂葉はものを感じ解析する。後頭葉は目からくる視覚情報を取り入れ解析する。側頭葉は記憶や言語、音を解析する。このように機能がマッピングされていることを脳の機能局在と呼ぶ。また、右脳と左脳で分かれている。一般に左脳が言語や計算、論理的な処理の優位半球である。一方、右脳は画像やイメージなどのアナログな情報を処理する。しかし、10~20%の人は言語の中枢が右側や両側にある。左脳と右脳は脳梁(corpus callosum)という神経の束で結ばれている。一般に女性の方が太いと言う。

(出典:Neuro Info Japan)

新皮質・古皮質・旧皮質

脳の中心部に旧皮質(Old cortex)があり、それを囲むように古皮質(Paleocortex)があり、その外側に新皮質(Cerebral neocortex)がある。これらの皮質を保護するのが、硬膜、くも膜、軟膜という3つの髄膜だ。クモ膜下出血で倒れる方がいる。脳を包んでいるクモ膜と脳との間にある隙間をクモ膜下腔といい、脳脊髄液(Cerebrospinal fluid)という透明な液体で満たされているが、 このクモ膜下腔(Subarachnoid space)に出血が起こった状態がクモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage)だ。

(出典:脳科学

脳の座標系

脳の座標系の定義は、解剖学的な正位を基準としている。つまり、下の図で示すように背側と腹側、頭側と尾側と呼ぶ。難しいのは、頭部だろう。前頭部側を吻側(Rostral)、後頭部側を尾側(Caudal)と呼ぶ。頭頂側が背側(dorsal)で、その反対の首側が腹側(ventral)となる。なお、左右で示す場合には、医師から見た左右ではなく、患者にとっての左右である。

(出典:方向の表現

散歩道1:脳細胞置換技術

生物学が苦手な人にとっては聞き慣れない用語が続いたので、ちょっと面白い実験を紹介したい。これは、スウェデンのルンド大学の研究である。脳細胞が損傷した場合に、外部で培養した脳細胞で置き換えることが可能かどうかの実験だ。結果的には置き換えに成功している。対象となったのは、脳細胞を損傷したラットの脳に、人間の脳細胞を移植した。正確には、脳卒中に陥ったラットの脳に、iPS細胞から作成した人間の脳細胞を移植し、人間の脳細胞がラットの脳細胞と神経接続を確立することが確認された。さらに、脳卒中により失われたラットの運動能力や感覚機能まで回復した。これは、異種の脳を組み合わせて一つの脳とする「脳細胞置換」技術だ。しかし、倫理的な問題が残る。人間の脳を持つラットはラットなのか、人間なのか。人の脳を別の動物に移植することが倫理的に許されるのか。痴呆症やアルツハイマー症を疾患した患者に誰か正常な人間のiPS細胞を移植して回復させるような治療が許されるのかどうか。技術が進めば進むほど倫理的に悩ましい問題に直面するジレンマに陥る懸念が高い。

(出典:ナゾロジー)

散歩道2:松果体

松果体(pineal body)とは、2つの大脳半球の下にある。視覚や聴覚などを司る視床体が結合する溝に挟まれている。ヒンズーでは第3の目と言う。実際、松果体は眼球と同様に水晶の主成分であるケイ素という物質で構成されている。目を閉じて瞑想することで松果体が活性化する効果があるのかもしれない。松果体が活性化すると、知覚が冴え、直観力が身に付くとされる。テレパシーや透視能力に目覚めるかは疑問だが、現在解明されている松果体の主な役割はメラトニンを分泌することである。メラトニンは、夜間になると分泌量が増加するので体内時計との関係が指摘されている。また、癌の抑制機能についても研究が進められている。エストロゲン依存性乳がんを抑えるインドールアミンなどメラトニントと癌との関係に関する研究も進められている。メラトニンは炎症促進性作用や免疫活性作用があるとも指摘されており、これからの研究の進展に期待される。また、2019年10月11日には、東京大学大学院理学系研究科の小島大輔講師、深田吉孝教授らのグループが松果体の遺伝子発現や発生を制御する鍵分子としてBsxを同定した。論文では、「細胞レベルで光受容ニューロンの特異性を決定することが明らかになった」とも述べている。光受容ニューロンの機能や仕組みの解明が進めば、光ベースのコンピュータ活用へのヒントにもなるかもしれない。今後の研究に期待される。

松果体は、睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌する脳器官であり、ニワトリやサカナなど多くの動物では光を感じる、いわゆる「第三の眼」として機能します。松果体の光受容細胞は、網膜の視細胞と多くの類似点をもつ一方、メラトニン分泌(松果体)と視覚(網膜)という互いに大きく異なる生理機能をもつことが知られています。このような「似て非なる」光受容細胞の個性が、いかなる分子メカニズムによってもたらされているのか、これまで謎として残されていました。今回、小島講師らのグループは、このような松果体の進化的・発生学的な特長に注目してゼブラフィッシュを用いた遺伝子組換え実験や分子生物学的な実験を行い、この脳内器官において特異的な遺伝子発現を制御する転写因子Bsxを同定しました。Bsxは松果体の光センサー分子であるエクソロドプシンの遺伝子プロモータに結合し、さらに別の転写因子Otx5(網膜と松果体に共通の転写因子)が近傍に結合して協同的に作用することにより、遺伝子発現が強力に活性化されることがわかりました。また個体レベルでBsxの機能を解析したところ、Bsxは松果体ニューロンの発生・分化に必須であることが明らかになりました。本研究において発見された鍵分子Bsxは、ゼブラフィッシュだけでなく、哺乳類の松果体にも強く発現することがわかっています。メラトニン分泌など種を越えて保存された松果体の機能発現において、Bsxは重要な役割をもつと考えられます。「進化の過程で生物は、器官・組織・細胞などの生体構造を倍加させ、さらに少しずつ異なる個性を付与することにより、機能を多様化させてきました」と小島講師は話します。「このような相同な生体構造に対してそれぞれに特徴的な個性を賦与する分子メカニズムはほとんど明らかにされておらず、松果体と網膜の比較研究はそのモデル系として期待されます」と続けます(出典:東京大学)。


(出典:東京大学

まとめ

今回は、第一回の講義のうちの前半部分の脳に関する講義で学んだことをネットからの情報で確認しながら理解を深めた。講義を聞いているだけでは、何が分かっていないのかが分からないが、自ら調べれば調べるほど疑問が湧いてきて謎は深まるばかりだ(笑)。脳の世界は奥が深いし、幅広い。今回の投稿ではその基本的なほんの一部を紹介したに過ぎない。また、自身の不学や理解不足から適切でない表現があるかもしれない。今回は、完成度を高めるよりも、理解を深めるために投稿することを優先した。また、自身でも適時見直して行きたいが、もし何か気づいた点があればご指摘いただけると幸甚だ。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

参考:次回の投稿

  • 1 はじめに
  • 2 ニューロン
    • 2.1 ニューロンの形
    • 2.2 ニューロン基本形状
    • 2.3 ニューロンモデル
    • 2.4 活動電位
    • 2.5 神経別伝導速度
  • 3 シナプス
    • 3.1 シナプス機構
    • 3.2 起動電位結合と活動電位
    • 3.3 活動電位と起動電位の伝導
  • 4 イオンチャネル
    • 4.1 細胞膜を介する物質輸送
    • 4.2 イオンチャネルと膜電位
    • 4.3 膜電位の変化
    • 4.4 膜電位方程式
  • 5 心の健康に必要な栄養素
  • 6 まとめ
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