脳型情報処理機械論#1-2(ニューロンやシナプスの機能と仕組みを考える)

はじめに

昨日の投稿では、科目履修生として受講した脳型情報処理機械論の第1回の講義のうち、前半の脳に関することをレビューした。今回は、後半のニューロンに関する講義をレビューしたい。ただし、講義の資料の再掲ではなく、講義で習ったことをネットで裏どりしながら、まとめたものなので、もし記載ミス等があるとしたらそれは自分の責任である点をご承知おき頂きたい。

その1:脳に関する講義(前回の投稿
その2:ニューロンに関する講義(⇨ 今回の投稿)

ニューロン

脳はどのようにして情報を処理しているのだろう。コンピュータであれば、電気回路をICやLSIなどに高度に集積している。人間の脳には約1000億個のニューロン(神経細胞:Neuron)が存在すると言う。19世紀には、神経繊維が網を形成する網状説と、神経繊維も細胞とするニューロン説が対立した。対立する2つの説を主張するイタリアの内科医カミッロ・ゴルジ(1843年7月から1926年1月)と、スペイン出身の神経解剖学者サンティアゴ・ラモン・イ・カハル(1852年5月から1934年10月)は、二人揃って1906年のノーベル生理学・医学賞を同時受賞している。

ニューロンの形

ニューロンには、2種類のヒゲがある。下の図(左)に示すように、細胞体の周りにある短いヒゲの樹状突起(じゅじょうとっき:dendrite)と細胞体からのびた長いヒゲの軸索(じくさく:axon)だ。軸索は長いもので90センチもあり、別のニューロンの樹状突起とつながっている。樹状突起が受け取るシグナルは、細胞体の電荷に影響を与える。細胞体が十分に脱分極すると、軸索丘領域は尾状の軸索を下行する活動電位を惹起する。電気シグナルは、軸索終末まで勢いよく進み、ターミナルの分枝が神経伝達物質を放出し、その標的に対して興奮性または抑制性の影響を及ぼす。一方、下の図(右)に示すように、神経系、脳、脊髄、末梢神経および神経節の構造体は、神経組織から作られる。 細胞レベルでは、この組織はニューロンと神経膠(しんけいこう:Glioma)から構成され、 ニューロンはその間で感覚シグナルや運動指令などのメッセージを運ぶ役割を担う。星状細胞は、脳で最も一般的な神経膠である。小膠細胞、上衣細胞と希突起膠細胞を含む他の神経膠は、ニューロン・ホメオスタシスの維持、病原体の除去、脳脊髄液の循環並びにニューロンの保護の役割を果たしている。何かを学習するときには、最初は点の知識だけど、点と点が1対1で結ばれ、さらにn対nに結ばれたときに納得感が高まる。まさにニューロンの世界でも、同様に最初は1対1で結ばれ、さらにn対nで結ばれて、ニューロンネットワークの機能を高めていくのだろうか。

(出典:Neuro Info Japan)

ニューロン基本形状

ニューロンは相互に接続し合う。その時の形状の分類はいくつかの方法がある。下の図に示すのは単極性ニューロン、多極性ニューロン、双極性ニューロン、偽短極性ニューロンの4つに分類する方法だ。単極性ニューロンは、突起が一本のみで臭粘膜の臭細胞や網膜のアマクリン細胞などだ。多極性ニューロンは中枢神経や末端の自律性神経などで最も一般的な形状だ。双極性ニューロンは、細胞体から反対の方向に2つの突起が出ている形状で、前庭神経節の細胞や網膜の双極細胞、螺旋神経節の細胞などだ。最後の偽単極性ニューロンは、細胞体から軸索が1本出て、T字型に分岐するもので、脊髄神経節や三叉神経節などの知覚性ニューロンだ。

(出典:pinterest)

ニューロンモデル

ニューロンは、神経伝達物質を通して情報を伝達する。電気的シグナルがニューロンの軸索終末に到達すると、神経伝達物質と呼ばれる特別な化学物質の放出が刺激される。神経伝達物質には、少なくとも100ほどの神経伝達物質がある。セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、およびアセチルコリンなどの神経伝達物質は有名だろう。神経伝達物質はシナプスを横切って他のニューロンまたは標的の細胞に到達し、シグナルと応答を刺激または抑制する。つまり、ニューロン内は電気信号が伝搬されるが、ニューロンとニューロンの橋渡しには化学物質が放出されるという仕組みのようだ。下の図は神経細胞の基本形だ。左から、運動ニューロン、臭覚ニューロン、聴覚ニューロン、そして皮膚感覚のニューロンだ。個人的には左の耳で高音が聞こえない突発性難聴を患ったので、聴覚ニューロンを回復させたいなあ。

(出典:痛み研究会)

活動電位

活動電位(action potential)とは、細胞膜に刺激が与えられたときに発生する一過性の膜電位の変化である。活動電位は、主にナトリウムイオンやカリウムイオンがイオンチャネルを出入りすることで生じる現象だ。活動電位は動物の本質的な機能だ。身の危険を感じたときに、素早く逃げる必要がある。そのための情報伝達機能は動物だけではなく植物にも存在する。活動電位はさまざまな種類の細胞から生み出されるが、最も広範には神経系において神経細胞同士や、神経細胞から筋肉や腺などの他の体組織に情報を伝達するために使われる。ニューロンにおける活動電位はデジタル的な特性と考えられていたが、近年では、細胞体付近で発生する活動電位の大きさは、アナログ的に変化することで、より複雑な情報を伝播できるという可能性が確認されつつある。軸索およびシナプスの終末の細胞膜には多様なイオンチャネルや受容体が豊富に存在している。下の図はさまざまな前提での活動電位の変化を調べたものだ。

(出典:新着論文レビュー

神経別伝導速度

これは講義では触れられなかったけど、ニューロンを調べていて、神経伝達物質の伝導速度が気になった。調べると、色々な定義があるが、運動神経伝導速度(motor nerve conduction velocity:MCV)はだいたい50〜70(m/sec)だ。これを時速に変換すると、時速180kmから時速252kmだ。ほぼ新幹線並みの超高速だということがわかる。また、有髄神経をシグナルが伝導する速度は、線維の長径と比例関係があり、長径(μm)を6倍すると伝導速度(m/s)が得られるという。つまり、神経が束が太くなるほどに素早く動けるようになる。つまり、日々の練習を積み重ねて身体に覚え込ませるとよく言われるが、これはつまり神経の束を太くさせるのに時間がかかるということなのかもしれない。伝導速度は温度にも依存し、温度が1°C低下すると1.5〜2(m/Sec)の速度低下が引き起こる。これは、ランビエ絞輪のナトリウムチャネルの開口時間が延長するためという。また、高齢になると反応が鈍くなるが、その低下の程度は80歳代でも10m/sだという。

(出典:コトバンク

シナプス

シナプス(synapse)とは、神経細胞間あるいは筋繊維、神経細胞と他種細胞間に形成される信号伝達などの神経活動に関わる接合部位とその構造を示す。シナプスには、化学シナプスである小胞シナプスや電気シナプスである無小胞シナプス、さらにはこの両方が混在する混合シナプスがある。信号を伝える方の細胞をシナプス前細胞、伝えられる方の細胞をシナプス後細胞という。

シナプス機構

下の図(左)で言えば、ピンクのニューロンからの信号を黄色のニューロンに届けるケースだ。ピンクのニューロンの末端にはシナプス前末端があり、ここからシナプス小胞(Synaptic vesicles)とよばれる小胞があり,このなかに神経伝達物質が格納されている。活動電位がシナプス前末端に到達すると,シナプス小胞がシナプス前末端膜と融合することで、格納されていた神経伝達物質が放出される。これをエキソサイトーシス(Exocytosis)と言う。黄色のニューロンのシナプス後膜には受容体があり、この受容体が神経伝達物質を受け取り,電気信号へと変換する。これらの一連の処理で情報が伝達される。シナプス前末端膜に融合したシナプス小胞は再びシナプス前末端へと取り込まれ、これをエンドサイトーシスと呼び、新たなシナプス小胞として再形成される。資源を無駄にせず、リユースしている。エキソサイトーシスされるシナプス小胞の量とエンドサイトーシスされるシナプス小胞の量を均衡させることで持続可能な仕組みとなっている。一方、下の図(右)は黄色のニューロンのシナプス後膜からピンクのニューロンのシナプス前末端に逆行する構図を示している。シナプス前末端から放出された神経伝達物質(グルタミン酸)は,黄色のニューロンのシナプス後膜でNMDA受容体を受け取り、Ca2+を流入し、これがカルモジュリンとなる。カルモジュリンはNO合成酵素を活性化しNOを産生するし、シナプス後膜およびシナプス前末端膜を透過して、ピンクのニューロンのシナプス前末端において水溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を活性化させる。sGCはcGMPを産生し、cGMPはcGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)を活性化する。そして、活性化したPKGはホスファチジルイノシトールビスリン酸(PIP2)の量を制御することで、シナプス小胞のエンドサイトーシスを加速させる。このようになルートでエンドサイトーシスのシナプス逆行性の制御が行われている。かなり巧みな構造と言える。

(出典:Neuro Info Japan)

起動電位結合と活動電位

前項で「活動電位がシナプス前末端に到達すると,シナプス小胞がシナプス前末端膜と融合することで、格納されていた神経伝達物質が放出される。」と記載したが、この活動電位(action potential)とは、なんらかの刺激に応じて細胞膜に生じる一過性の膜電位の変化である。一方、起動電位とは、受容器の膜が刺激を感知して脱分極する結果生じる電位のことである。この起動電位が活動電位として感覚ニューロンに伝えられる。起動電位は神経細胞の樹状突起から細胞体を経て軸索付け根の軸索丘まで運ばれる。軸索丘では他の受容器や他の神経からシナプスで樹状突起に入力され、同じ様に軸索丘に運ばれた信号を空間的・時間的に合算(統合)する。そして、総合的に閾値を越えれば、ここで活動電位発射(発火)となる。受容器で末梢変換された信号は軸索丘まで伝わる時までは細胞膜の電気抵抗特性にしたがって減衰する。一方、活動電位はオンかオフのデジタル信号なので、強弱はなく一定だ。ただし、活動電位のインパルスの頻度は刺激の強弱に比例するという。

(出典:痛み研究会

活動電位と起動電位の伝導

すでに「活動電位とは細胞膜に刺激が与えられたときに発生する一過性の膜電位の変化」であり、「起動電位とは、受容器の膜が刺激を感知して脱分極する結果生じる電位」のことであると記載した。下の図(左)に示すように、外部から与えられた刺激に基づいて発生する活動電位は、信号レベルが一定で減衰しない仕組みとなっている。しかし、脱分極の結果生じる起動電位は徐々に減衰する仕組みとなっている。

(出典:痛み研究会)

イオンチャネル

細胞膜を介する物質輸送

細胞内と細胞外は、細胞膜で守られている。しかし、細胞にも出入り口が用意されている。下の図に示すように、拡散とイオンポンプとイオンチャネルがある。拡散には、水、酸素、二酸化炭素、脂溶性物質などの単純拡散と、アミノ酸、グルコースなどの促進拡散がある。イオンポンプは、アデノシン三リン酸(ATP)を用いてNA+を細胞外に排出し、K+を細胞内に取り入れるイオンパイプがある。ATPは、アデノシンという物質に3つのリン酸基(P)が結合している。ATP分解酵素の働きによってATPが加水分解すると、ひとつのリン酸基(P)がはずれてADP(アデノシン二リン酸)になり、その際にエネルギーを放出し、このエネルギーを使って筋の収縮が行われる。最後のイオンチャネルは、膜電位に依存したチャネルの開閉によって特定のイオンが選択的に膜を透過する「電位依存イオンチャネル」と、神経伝達物質などの化学的メッセンジャー(=リガンド)の結合に応答して、Na+、K+、Ca2+、Clなどのイオンが膜を通過するように開くリガンド依存性イオンチャネル (Ligand-gated ion channels:LIC、LGIC)がある。

(出典:Twitter)

イオンチャネルと膜電位

イオンチャネルはすべての細胞の細胞膜に存在する生命にとって必須のタンパク質である。神経系ではイオンチャネルは電気信号を生み出し伝導する役割を担う。また、筋肉の収縮にも深く関わっている。例えば、キーボードで文字を打ちたいと脳で考えたことが、イオンチャネルを通じて筋肉に指示を与えて、キーボードのキーを叩くようになる。イオンチャネルが働く仕組みを分子レベルで解明することができれば不整脈やてんかんなどイオンチャネルの不具合が原因の病気の治療に役立つ可能性がある。

(出典:福井大学医学部

膜電位の変化

膜電位(まくでんい:membrane potential)は、細胞の内外に存在する電位の差のことである。すべての細胞は、前述の通り細胞膜をはさんで細胞の中と外を隔てているが、細胞の中と外ではイオンの組成が異なる場合に、電荷を持つイオンの分布の差が電位の差を生じる。神経細胞や筋細胞は、膜電位を素早く変化させることで外敵からも自分の身を守ることができる。これは高度な生物だけではなく、例えばゾウリムシも膜電位の変化により、繊毛の打つ方向を制御している。植物でも、オジギソウの小葉は触れられると、閉じる仕組みなのも、オジギソウの細胞の膜電位の変化によるものだ。そして、電位の変化は、細胞の中がマイナス、細胞の外がプラスの状態である分極では状態を維持する。細胞内がプラスの電位となる脱分極では電位が立ち上がる。しかし、電位は変化せず、高い電位を保ち収縮し続ける。そして、細胞内の電位は、静止膜電位の約-80mVを目指し再度マイナスになる再分極で下がる。

(出典:花子のまとめノート

膜電位方程式

1963年のノーベル生理学・医学賞は活動電位の功績により、英国の生理学者であるSir Andrew Fielding Huxley(1917年11月から2012年5月)と、Sir Alan Lloyd Hodgkin(1914年2月から1998年12月が受賞した。この二入が考案した活動電位式は、二人の名前を関してHodgkin-Huxleyの方程式と呼ばれている。論文などでは略してH-H方程式と書かれている。これは、ホジキン-ハクスリーモデルとも呼ばれ、神経細胞の活動電位がどのように発生し、伝播するかを記述する数学モデルである。つまり、例えば鋲を踏んだときに、その信号が脳に届き、それから足が動くのでは致命的に遅くなる。このため、痛いという信号で反射的に足を引っ込めるという行動につながる。このような動きを非線形微分方程式で表したものだ。方程式の(1)は電流Iがコンデンサーに流れる電流とNaゲートに流れる電流とKゲートに流れる電流とLゲートに流れる電流の総和であることを示す。方程式(2)、(3)、(4)によって膜電位の影響を受け、時間的に変動していく様子を示す。このような反射的な動きがあるから生物は天敵から逃げることができたのだろう。ホジキンとハクスリーが論文発表した1952年から46年後の1998年に米国の分子生物学者・生物物理学者であるロックフェラー大学のロデリック・マキノン教授(Roderick MacKinnon:1956年2月より)イオンチャネルの研究により、米国の医学博士ピーター・アグレ(Peter Agre、1949年1月よりとノーベル化学賞を受賞した。

(出典:神戸大学

心の健康に必要な栄養素

講義を受けていて、体内のどこで電気を生成し、どこで蓄積しているのかと疑問を感じた。答えは、ナトリウム(Na)やカリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、クロール(Cl)などのイオン物質が電位を発生し、それがトリガーとなって、起動電位が伝搬される。つまり、カリウムやナトリウムやカルシウムなどを含む健康的な食事をして、これらイオン物質を体内の分泌させることが、電池の性能を維持することになり、身体もココロも健康に保てることになる。よく食べて、よく運動して、よく寝ることが健康の基本という当たり前のことが結論となる。

(出典:imoc academy)

まとめ

今回は、第1回目の講義の内容を2回に分けて復習の意味を込めてまとめてみた。脳の構造はマクロ的だし、ハード的なので理解しやすい。今回のニューロンやシナプスはミクロ的だし、その仕組みが非常に複雑なので難解だ。ただ、そのような仕組みでホジキン教授とハクスリー教授は1952年にノーベル化学賞を受賞している。また、1998年にはイオンチャネルの研究でマキノン教授とアグレ博士がノーベル化学賞を受賞している。まさに、現在進行中の研究テーマと言える。また、カリウムやカルシウム、ナトリウムなどを含む食事と適度の運動と睡眠が健康な身体と心を形成する基礎となる。よく遊び、よく学びは生涯現役のためにも必要なことのようだ。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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