レアアースの埋蔵量は豊富だが、包含比率が希少で、問題は大量の廃棄物。これはエコではなく、エゴシステムかもしれない。

はじめに

2021年10月12日に日本技術士会の資源工学部会が主催する「貴金属・レアメタルのリサイクルの現状と意義」というテーマの講演会があった。講演者は東京大学生産技術研究所長の岡部徹博士だ。京都大学でレアメタルの製錬で修士・博士を取得した。1993年5月からはMITの博士研究員として活動し、1995年10月には東北大学の助手として帰国し、2001年には東京大学の助教授として着任し、2009年には教授に就任された。本人曰く、一貫してレアメタルやレアアースの研究を続けている。学生時代には、レアメタルを研究する人などいなくて希少価値があった。最近はエコブームに乗ってレアメタルの研究をしている言うだけで評価してもらえる。時代が変わったものだと感じるという。そんな最前線を突き進んでいた岡部教授の話は謙虚でありながら、過激だった。

レアアースはレアではない

レアアースとレアメタル

レアメタルは希少金属と呼ばれる。レアアースは希土類。ともに希少の「希」がつく。何が希少なのかというと、その埋蔵量なり、生産量が少ないのだと思っていた。しかし、岡部博士は、埋蔵量は十分にある。海底資源も話題になっているが、地上の資源だけでも十分にある。アメリカ地質調査所によると、レアアースの世界の埋蔵量はおよそ9,900万トンに対して、全世界の年間消費量約15万トンなので、660年分だという。問題は、その含有量が少ないことだ。例えば、高性能モータには、ネオジム約0.27kg、ジスプロシウム約0.13kgが必要だ。これを抽出するには、約1トンから4トンの鉱石を発掘して、精錬する必要がある。つまり、わずか0.4kgの資源を得るために、3,999.6kgの鉱石を処理し、その多くを廃棄している。

(出典:風の谷

レアアースの埋蔵量と生産量

レアアースの生産量の約86%を中国が占めている。圧倒的なシェアだ。しかし、埋蔵量で見ると中国は42%だ。なぜ、中国がこれをほど生産量を伸ばしているのかと言うと、その理由は規制の緩さだという。日本では、鉱山を発掘して、精錬して、レアアースを抽出するためのそれぞれの過程において厳しい安全基準や規制があり、それらを遵守するととても商用ベースでは生産できない。中国では、国策としてレアアースの生産を進めている。下の図で注目すべきは埋蔵量と生産量の差異だ。埋蔵量は1億3千万トンであり、生産量は11万トンだ。つまり、埋蔵量は、生産量の約1000倍ある。全然、希少ではない。問題は、包含比率であり、不要となる廃棄物の処理だ。さらに言えば、NORMと呼ばれる自然起源放射性物質の処理だ。

(出典:韓国経済.com)

グローバルな視点で考える

環境負荷の高い発掘や精製は海外で実施

日本ではレアアースに精製したものを活用としてバッテリーやモーターや製品を製造する。しかし、その数千倍から1万倍の廃棄物の処理する必要がある。誰が鉱山の発掘をしているのか。「南米ペルーのラ・リンコナダの金鉱採掘場」では、金の発掘に従事する人たちは標高5100mに高地で「カチョレオ」と呼ばれる報酬システムで懸命に採掘している。このカチョレオとは何かというと、1ヶ月のうち1日だけ発掘した金の鉱石をモテるだけ自分のものにできるが、それ以外の日は全て無償で働く。鉱山での作業を改善するには、機械化やロボットの投入が有効かもしれないが、経済的な問題や技術的な問題などがあり、まだまだ人手に頼っている現場が多いだろう。また、前述の放射能の問題がある。

厄介なNORMの処理

人工放射性核種を含む物質を人工放射性物質という。NORMとは、自然起源の放射性核種を含む物質を自然起源放射性物質(Naturally Occurring Radioactive Materials)の略だ。地球が誕生した当時には、地球には自然起源の放射性核種が大量に存在していた。地球誕生から46億年過ぎた現在でも放射能を含む物質は残っている。特に、土壌や岩石や鉱石には、自然起源の放射性核種が含まれている。

(出典:QST)

メリットの多い海底鉱物資源

日本は資源がないと国と自虐的に言う人が多いが、そんなことはない。海に囲まれた島国であるからこそ、豊な海がある。そして、南鳥島のEEZには、高品質なレアアースを大量に含む海底の泥「レアアース泥(でい)」が確認されている。有望海域315km2には、国内のレアアース需要200~3000年分の資源が眠っている。例えば、固体酸化物形燃料電池の電解質材料として期待されているスカンジウムは、世界供給量の1万年分もあるという。しかも、次のような5つのメリットがある。
1)レアアース含有量が多いこと:価値が高いといわれているジスプロシウムやテルビウム、イットリウムなどの重レアアースを多く含んでいる。
2)太平洋に広く分布:資源量が膨大であり、陸上埋蔵量の1000倍にも達する。
3)資源探査の容易さ:海底表面にあるレアアース泥は、広さ1000km2を囲む4点を探査するだけで資源量を把握することが可能という。
4) トリウムやウランなどの放射性元素をほとんど含まない:レアアース鉱床に放射性元素が含まれている陸上鉱石ではレアアース抽出後に残る廃棄物処理が問題だが、レアアース泥は、放射性元素の含有量が少ない。このため、放射性元素の処理がいらない“クリーンな資源と言える。
5) レアアース抽出の容易さ:常温の希酸に短時間浸すだけでレアアースのほとんど全てを抽出できる。

(出典:Monoist)

まとめ

電気自動車は走行時にCO2を排出しないため、クリーンでエコだという。しかし、それはエコではなく、エゴだ。つまり、電気自動車を走行させる先進国ではエコかもしれない。しかし、それを実現するためにレアアースやレアメタルを発掘し、製錬する現場は環境破壊そのものだ。それに従事する作業員の健康被害も懸念される。400gのレアメタルを抽出するために4トンの鉱山を掘削し、99.99%が産業廃棄物になることを考えると、確かにエコシステムではなく、エゴシステムかもしれない。

以上

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