電線の地中埋設の意義と効果、景観を守りつつコストを抑制するアイデアが大事だ。

はじめに

筆記試験に合格して、口頭試験にチャレンジする受験生の指導をしていて、電線の地中化について考える機会があった。日本では電線地中化が遅れているというよりは、架空での電力線や通信線の整備がさらに広がっている。多くの先進国では景観の観点から電線の地中化が進んでいるのに、なぜ日本では地中化が進まないのか。実は、ターニングポイントは戦後の復興期に緊急避難的に架空での整備を認めたものが現在に続いているようだ。今回は、少し軽めに投稿したい。

電線地中化の状況

ロンドンやパリでは電線は地中埋設が基本だ。バルト三国を2017年に訪問した時にも架空電線はほとんど見なかった。電線だけではなく、携帯電話の基地局も外からは見れないように配慮している。香港も美観には配慮していて、ほぼ100%が地中化されている。ビルの裏は汚かったりするけど、外から見えるところはとことん綺麗にする。これに比べて、日本では新幹線から富士山を見れる絶好の場所ですら電線が張り巡らされている。改善点は多いと言うか多すぎる。

(出典:電線のない街づくり支援ネットワーク

電線地中埋設の意義と効果

地中埋設の意義は何だろうか。景観面や観光面、災害時の被害の抑制などのメリットがある。特に大きいのが景観面だろう。名古屋に単身赴任したときには、候補物件を色々見て、最終的には、イケメンゴリラのいる東山公園の近くのマンションにした。その理由は住んで半年ぐらいして気がついた。それは周辺の電線が地中埋設されていて景観が良かった。昔ながらの山を見れることにすごく懐かしさと安心さを感じた。後から気づくとはなんとも恥ずかしいが、やはり景観は大事だと思った。下の図は京都の事例だ。25本の電柱を無くすのに4億円以上の費用がかかったようだが、それ以上の価値があったのではないだろうか。より安価に実現する方法として電柱はそのままにして、電線のみ地中化するソフト地中化方式や、表通りの電柱を撤去して、家と家の間の目立たない場所に配線する裏配線方式、沿道の家屋の軒下に電線を配線する軒下配線方式などが考えられている。景観を改善しつつも、コストを抑制する方法に知恵を絞り出す必要があるかもしれない。

清水寺と高台寺を結ぶ一年坂と二年坂、産寧坂の430メートルにあった25本の電柱をなくすため、市が2006年~08年度の事業として道路下に電力や通信のケーブルが入った管を埋設。関西電力やNTTなどが沿道の家屋や店舗への配線を切り替え、今年11月に撤去を完了した。埋設にかかった事業費は国の補助金を含め約4億1千万円で、同時に石畳も新調しました。


(出典:無電柱化コラム

地中化に向けての課題

最大の課題はコストの低減だ。欧米では低コストの直接埋設法だが、日本は原則共同溝や個別管路による敷設なので、コストが1kmあたり3.5億円程度だ。これを欧米のように1kmあたり数千万円まで低減させるためのブレイクスルーが必要だ。通信線に関しては、FTTHがNTTの大きなミッションだけど、実は各家庭までを光にしなくても、ラスト1マイルは無線で良いのではないかという気もする。電柱は樹木のようにカモフラージュして基地局として活用する案もある。景観的に、縦の線(=電柱)はそれほど気にならないが、横の線(=電線)は蜘蛛の巣のようで非常に気なる。これは生理的な面もあると思う。

(出典:国土交通省)

路面電車の景観

欧州を旅行すると電線の地中化が進んでいて景観の良さに感心する。しかし、その一方で、路面電車への給電のため、路線の上空に架線が張り巡らされていて、興醒めする。しかし、そんな路面電車に蓄電池を搭載することで、架線を不要にする方法がある。これのメリットは3つある。一つは、市街地など景観保護地域にも路線を拡張しやすいこと、2つ目は並行して走る大型自動車の妨げにならないこと、さらに架線の給電が万一ストップしても電池が持つ限り走行できること。停車場で充電する方法もある。今後の路面電車の風景が一変する可能性もある。

(出典:スマートジャパン

まとめ

日本人は綺麗好きな国民だと思う。衛生観念も高い。しかし、なぜ景観面での意識が低いのだろうか。それとも、役所や大きな会社がやることには反対しても無駄という諦めがあるのだろうか。時間も費用も労力もかかるけど、都市整備の基本的な条件として、電線の地中化を推し進めて、世界に誇れる街にしたい。そのためにはどうすれば良いのだろうか。

以上

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