美容医療の成長余地は大きいが質の向上と信頼確保、正しい情報開示が課題だろう。

はじめに

今回は、医療業界のうち美容医療について現状と課題を考えてみた。美容医療の中心は美容外科である。市場は拡大傾向にある。医療は基本保健医療をベースとしているが、美容医療は自由診療がベースである点が特徴だ。その意味では、もっともビジネス的な要素の強い分野と言える。課題も多いが、将来が楽しみな分野でもある。そんな美容医療の実態と課題にトライする。

美容医療とは

美容医療は、美容外科、美容皮膚科、再生医療、美容内科などから構成される。美容外科は、二重や小顔などの手術や美容手術や、豊胸、脂肪吸引などだ。美容皮膚科はしみや小皺、ニキビ、しわなどへの治療だ。再生医療は植毛やハゲ治療だ。最後は、美容内科とも呼ばれるホルモン治療だ。更年期障害の対応や性機能障害への対応など老化対応などだ。これからの高齢化社会では美容内科のニーズが伸びると期待される。


(出典:美容医療の現状

美容医療

美容医療市場の推移

美容医療の市場規模は約3,252億円(2017年度)だ。これは2014年の2,833億円に比べると14.8%の増加だ。2009年の2,482億円から、2010年は3.9%減少の2,384億円となったが、その後は順調に市場規模が拡大している。美容内科は、美容外科の外科的治療や美容皮膚科の治療とは異なり、身体の内側から健康や若さ、美しさを追求する医療分野だ。これからの高齢化社会で健康寿命を拡大する観点からも需要が見込まれる。


(出典:矢野経済研究所

美容整形市場の国別ランキング

美容整形というと韓国がダントツのイメージだけど、国別の件数ランキングでは米国が109万件でトップである。ブラジルが91万件で二位、中国が42万件で三位。日本は37万件で4位だ。件数では日本は韓国の約1.5倍だ。また、人口1,000人あたりだと、順位が異なり、一位がギリシャの5.34件、二位がイタリアの5.21人、三位が韓国の5.19人だ。日本は九位の2.92件だ。,1000人あたりで日韓を比較すると韓国は日本の1.8倍美容整形手術を受けている。


(出典:社会実情データ図録

サービス医療

一般的な医療は健康保険がベースとなる保険医療だが、美容医療は自由診療がベースだ。保険医療の場合には国が保健適用の点数を決め、医者はこの点数に従った報酬を受け取る。一方、自由診療の場合の報酬は医者が自由にマーケットベースで決めることができる。この自由診療の対象には、美容医療以外にも、生殖医療や高度先進医療、代替医療、未病医療、予防医療、健康診断などの分野がある。美容医療は治療ではなく生活改善であり、美しくなりたいという願望の実現だ。通常の医療の場合には、疾患の原因を分析し、最適な治療を医師が決めて、患者の同意のもとで実施する。しかし、美容医療の場合には、基本は患者の意思決定がベースにあり、これに対する施術を医師が請け負う。このため、患者は自分の発注に対する自己責任を負う。難しいのは、医療に対する保証をかけられない点だ。発注するのは患者だが、その具体的な医療行為を決定するのは医者であり、発注者である患者には専門知識が乏しいため、受注者である医者が発注者である患者に、適切な情報を提供し、理解を求める必要がある。このため、美容医療を行う医師には、専門知識や技能に加えてコミュニケーション能力が求められる。

(出典:美容医療の現状

美容医療サービス相談件数

患者は、自分の意思で、美しくなりたいと願望し、その施術を医師に求める。しかし、願望通りの施術が行われ、患者が満足すれば良いが、満足しないケースがある。それは、施術が不適切だった場合もあるし、患者の願望レベルとの乖離がある場合もある。美容医療のトラブルは全国の消費生活センターに寄せられるが、その数は年間2,0000件を超えている。年間37万件実施して、2千件なら比率としては0.54%だ。トラブルは少ない方がもちろん良いので、美容医療サービスのトラブルを減少させるために2017年12月1日の改正特商法施行後は、特定継続的役務提供の要件に該当すれば、特定の美容医療サービスについてもクーリング・オフ等が可能になった。

(出典:国民生活センター

各国の美容整形医の人数(2011年)

2011年時点での整形医は、世界で41,894人だ。整形手術件数が637万件なので、平均すると一人で年間約200件手術している。日本では、1831人の美容整形医が37.2万件の手術をするので、平均一人年間203件でほぼ平均と同様だった。


(出典:社会実情データ図録

美容医療の課題

医療技術の向上

女性の美しくなりたいという願望は切実だ。容姿の良さと世帯年収には相関関係があるようだし、就職試験などでも容姿は大きな要素となっている。このため、小顔にしたり、目の印象を良くしたり、エラのラインを改善したりする施術の技術革新は日々継続して研鑽する必要がある。なお、日本では、整形手術をした後と前が少し分かり憎いぐらいの改善が求められるが、欧米では明確に違いを求められるようだ。この辺りは国民性の違いにも関係するのだろう。

(出典:リッツ美容外科

美容整形SNS

美容医療のリアルな口コミ、整形手術前後の写真、体験談や悩みをシェアできるSNSがある。代表的なものがMeilyだ。提供しているのは2017年11月に設立した株式会社Mailyで、2018年10月には美容整形の口コミや予約をリリースし、2020年9月にはMeilyでの一括見積もりサービスを開始した。美容医療の初心者や全く知識がない人でも、クリニックの症例やメイリー編集部のオリジナル記事があるので安心ということで人気のSNSになっている。

(出典:Meily)

O2Oプラットフォーム

O2Oプラットフォームとは、On-Line to Off-Lineの略で、患者(=ユーザ)のニーズと病院の提供内容をマッチングし、医療機関に誘導するアプリだ。美容医療では約20%から30%を広告宣伝費用として払っている。今後は、O2Oアプリの手数料として15%から20%を支払っても集客できれば十分ペイする。先に説明したMeily以外にも、NICOLYやLUCMO、TRIBEAUなどの美容系のSNSなどもある。今後は、これらSNSとのタイアップやO2Oプラットフォームなどを有効利用することがますます重要となりそうだ。


(出典:美容医療O2Oプラットフォームの動向と今後の展望

今後の展望

顧客ニーズの多様化

矢野経済研究所によると、市場は今後も拡大基調で推移するが、外科的施術から非外科的施術のシフト、美容皮膚科を標榜する医療施設の増加、美容内科領域を拡大する医療施設の増加を今後の展望として指摘している。最初の非外科的施術とは、ヒアルロン酸注入や脱毛、ボトックス注入などだ。2つ目の皮膚内科施設の増加は、外科的施術の能力を持たない一般の皮膚科、内科などの医療施設が美容皮膚科を掲げて美容医療に参画する傾向だ。最後の美容内科施設の増加は、身体の内側から健康・若さ・美しさを追求するアプローチだ。内面と外面の双方から相乗効果をあげるアプローチとも言える(出典:矢野経済研究所

美容整形への受容度向上

美容整形に対する否定的な意識が薄れている。特に、10代の女性122人に調査をしたところ、9割以上が整形したいと回答した。また、そのうち半数が二重を希望した。美容整形に対して否定的な考えの人は0人で全員が肯定的だった。また、その賛成する理由で最も多いのは、「悩みやコンプレックスが解消できるから(72.1%)」がトップで、ついで「自分自身が美容整形したいから(59.8%)」、「なりたい顔や憧れの人に近づける手段だから(52.5%)」が上位の回答だった。

(出典:PR Times)

医師の参入拡大

下の図は湘南美容グループの年間来院者数の推移だ。湘南美容クリニックを開設したのが2000年だ。2008年には12万人を超え、その10年後の2018年には186万人を超えた。年平均成長率は31.1%と脅威的だ。自由診療がベースなので、医師の収入も研修医上がりでも年収2,000万円以上が期待できるなど待遇は良いようだ。美容医療も、国民のニーズを捕まえて、外面だけではなく、内面の健康や美しさも支援するのであれば、さらに市場は拡大するものと期待される。

(出典:NewsPicks)

まとめ

今回は、美容医療について考えてみた。以前、「病院の3分2が赤字経営。製薬会社も病院も厳しく医療崩壊の危機。」といった投稿をしたが、美容医療の分野は元気だった。特徴的なのは自由診療がベースであることだ。このため、一般の医療と異なり、広告宣伝費比率が2割以上と高く、ブランドを高めることが重要だ。また、若い女性がメインの利用者であるため、SNSの活用も進んでいる。これまでは整形外科手術がメインだったが、今後は皮膚やホルモンや再生医療なども含めた総合的な美容医療ビジネスとして健全な発展が図られることが期待される。そのためには、透明性の高い、利用者に寄り添った医療サービスの提供を行うことが必要だし、治療に対する正確で丁寧な説明やアフターフォローなども有効だ。安全・安心を全面に提供して、顧客の満足度を高めるのであれば、今後もしかするとサブスクリプション型の美容医療ビジネスも実現するかもしれないと思った。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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