アフターコロナに向けて進むべき方向性は国民充実度の向上か。そのための4つの要因とこれを推進する新総裁は誰になるのか。

はじめに

コロナ禍が長引いている。7月から増加した感染者数は減少傾向を示している。このまま減少して、日常が戻って来るのだろうか。経済活動が停滞し、深刻な不況になるのではないかという懸念もある(朝日新聞)。経済活動の再開は是非早期に実現できるようになってほしいが、経済が復活すればそれで十分かと言えばそうではない。やはり全ての国民が充実感と満足感を感じるようなやりがいのある国づくりだろう。自民党の総裁選は、9月17日に告示され、9月29日に開票される。新しい自民党総裁は誰になるのだろう。その場合に大事なことは日本が目指すべき方向性だろう。今日は、そんな方向性の一つとなりうる国民充実度(GDW)について考えてみた。高度成長期においては、GDPの向上と国民の充実度に相関があった。GDPしかし、GDPが一定レベルを超えるとそれ以上にGDPが上がっても国民の充実度は上がらない。


(出典:NIKKEI)

国内総生産(GDP)とは

GDPとGNPとNNPとNIの違い

国内総生産(GDP:gross domestic product)は、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のことである。このGDPに海外からの純所得を加えたものが国民総生産(GNP:Gross National Product)である。GNPから減価償却費に相当する固定資本減耗(げんこう)を除外したものが国民純生産(NNP:net national product)となる。さらにNNPから間接勢や補助金を除いたものが国民所得(NI:National Income)となる。

(出典:政治・経済Pointまとめ

名目GDP、実質GDP、GDPデフレーターの推移

GDPは、前述の通り、国内総生産である。つまり、一定期間に国内に産み出された付加価値の合計である。企業が原料を購入し、製品を作り上げて販売する。販売金額から中間投入額(原材料、光熱燃料、間接費等)を控除したものがGDPだ。これがプラスなら経済成長していることになる。このGDPには名目GDPと実質GDPがある。名目GDPはGDPをその時の市場価格で評価したものだ。つまり、物価の変動を反映したものが名目GDPだ。一方、実質GDPは名目GDPから物価の変動による影響を差し引いたものだ。つまり、1年目は1万円、2年目は1.1万円で販売したとして、物価変動が10%だとすれば、1年目も2年目も1万円で販売したと換算するものが実質GDPだ。3番目のGDPデフレーター(GDP deflator)は、物価変動の程度を示す物価指数だ。つまり、GDPデフレーターは名目GDPと実質GDPの比で計算される。GDPデフレーターの増加率がプラスであればインフレーション、マイナスであればデフレーションと言える。下の図では、1994年以前から2013年まで一貫してGDPデフレーターが減少しているので、デフレが続いていたと言える。2013年以降は反転しているが弱い。それよりも2020年のGDPが落ち込んでいる。2021年にはさらにこの落ち込みが加速すると懸念される。
(出典:GD Fleak)

国内総充実(GDW)とは

国内総充実(GDW:gross domestic well-being)とは、国民一人一人の充実度(ウェルビーイング)を測定するための指標である。2021年2月4日に行われた第204回国会予算委員会において、自民党政調会長・下村博文より「国民一人一人の幸福・充実度を測る尺度として提唱された概念である。経済は目に見える価値だけど、充実度は目に見えない価値であり、これをどのように評価するのかは簡単ではない。

ウェルビーイング

アリストテレスによる「最高の善は幸福であり、善く生きることが幸福と同じ意味である」と説いていて、ウェルビーイングはまさにこの善く生きることと理解している。幸福度や充実度の尺度として検討されている。英語版のWikiの概要の要約を次に示す。

ウェルビーイング(Well-being)とは、ウェルネスやクオリティ・オブ・ライフとも呼ばれ、誰かにとって相対的に本質的に価値のあるものを指す。つまり、ある人の幸福とは、その人の自己利益にかなうものを指す。主観的な幸福とは、人々が自分の人生をどのように経験し、評価しているかを示す言葉であり、通常はアンケート調査による自己申告の幸福度との関連で測定される。精神的な幸福、身体的な幸福、経済的な幸福、感情的な幸福など、異なる種類の幸福が区別される。我々が何をすべきかは、誰かの人生を良くするか悪くするかに依存する。幸福の理論は、すべての幸福に不可欠なものを明らかにしようとする。ヘドニズム理論では、苦痛に対する快楽のバランスが幸福であるとしている。欲求説では、幸福は欲求の充足にあるとし、欲求の充足数が多いほど幸福度が高いとする。客観的リスト説では、人の幸福は主観的な要素と客観的な要素の両方を含む要因のリストに依存するとしている。幸福はポジティブ心理学の中心的なテーマであり、人間の幸福に寄与する要因を発見することを目的とする。 例えば、マーティン・セリグマンは、これらの要因は、ポジティブな感情を持つこと、活動に従事すること、他の人々と良好な関係を持つこと、自分の人生に意味を見出すこと、自分の目標を追求して達成感を得ることなどで構成されると示唆する(出典)。

GDPからGDWへ

経済成長と国民の幸福は残念ながら同義ではない。高度成長期には経済成長を目指すことが国民の幸福につながった。しかし、経済成長を果たした現在では、さらに経済成長を目指しても国民が幸福になるとは限らない。下の図の横軸は経済成長、縦軸は国民の満足度をプロットしたものだ。日本はGDPでは韓国やフランスやイスラエルよりも豊かなはずだけど、国民の満足度はこれらの国よりも残念ながら低い。3つのシナリオを追記したが、今後の日本が進むべき方向性はどこだろう。シナリオAがさらなる経済成長、シナリオBが国民の満足度の向上、シナリオCが衰退。国民の多くはシナリオBに賛同するのではないだろうか。

(出典:Forbes)

TeachingとEducation

既知のことを教える(Teaching)ことと、未知のことを学ばせる(Education)がある。日本ではEducationを教育と訳しているが、やっていることはTeachingだという批判がある。日本では「1+1=?」の?を質問する。2と答えたら正解だ。これはTeachingだろう。「x+y=10」を満足するxとyを考えてみようというのはEducationかもしれない。これまでに日本社会では、一定の水準の人材を排出することが主目的なためボトムアップ的な教育をベースとしていた。しかし、これからは独創的な技術や発想が重要だ。優秀な人材に輩出するための仕組みについては、以前「教育改革は永遠のテーマ。戦前の五修や四修のような飛び級や飛び入学を可能にできないものか。」に投稿した。尖った人材を輩出するには、国民一人一人の得手不得手を見極めて、才能のある部分を伸ばす教育が重要だと思う。自分が好きなことであれば、一生懸命に考えるし、努力するし、その努力を苦とは感じない。

志と感謝の心

「人それぞれに夢があり、夢それぞれに道がある。人皆それぞれの道で励みなん」という言葉が好きだ。いつ習ったのかは覚えていないけど妙に心に残っている。吉田松陰が長州萩城下で開いた松下村塾では、「あなたの志は何か?」と尋ねるシーンがあった。岡山県高梁市の中学校では立志式を行い、生徒が自分の志を発表する。志を明確にした生徒の成長は目覚ましいという。

(出典:岡山県高梁市立有漢中学校の立志式

利他の心

人間は一人では生きていけない。人間は自分のために生きた時よりも、誰かのために生きた時にこそ幸福感を感じるという。お金が欲しいとか、出世したいとか、人気者になりたいという利己的な欲望を満足してもなかなか幸福感は感じない。しかし、誰かが喜んでくれたり、誰かの役に立てたり、社会に貢献できたと感じる時には幸せを感じる。日本人だけではないけど、日本社会は特にそのような側面が強いと思う。夢を持つことは自己実現に重要だ。さらに志を持つことは社会全体への貢献につながるのではないだろうか。

日本型経営と経済の安定的成長

世界最古の企業は日本にある株式会社金剛組だ。飛鳥時代(西暦578年)に四天王寺を建立するために聖徳太子が百済から招いた宮大工金剛重光によって創業された金剛組だ。世界の創業200年以上の企業・約5600社のうち半数の約3100社が日本の企業だ。このように長く続く企業の理念は社会への貢献だと思う。自分たちが儲けようとか、企業は株主のものという考え方ではない。

三方よし

近江商人の三方よしは有名だ。近江商人研究者の小倉榮一郎氏によって紹介された。近江商人が到達した商いの精神を端的に表しており、日本の老舗企業の精神にも通じるものだ(出典:近江商人博物館)。

「三方よし」(さんぽうよし)
近江商人がつちかってきた商いの精神「三方よし」。「売り手によし、買い手によし、世間によし」すなわち、「三方よし」。その意味は、「商いというものは、売り手も買い手も適正な利益を得て満足する取り引きでなければならない。そして、その取り引きが地域社会全体の幸福につながるものでなければならない」という共存共栄の精神を表しています。

非正規労働者比率と付加価値額の関係

日本では非正規雇用が急速に拡大して、ワーキングプアの問題が増大した。2018年4月からは、「通算5年以上雇用される労働者は、無期雇用契約への転換を申し出ることができる」とする有期雇用労働者の無期雇用転換制度が導入されたが、格差の是正は進んでいない。下の図に示すように、就業者に占める非正規労働者の割合が大きい業種ほど、1時間当たりの付加価値額が低い。非正規雇用の増加は、賃金の減少や消費の減少などにより、経済の悪循環を引き起こす要因となる。適切な賃金水準の確保は課題だ。

(出典:環境省

増大する高齢者の生活保護受給者

生活保護受給者数は、2014年度に約217万人まで増大した。その後、やや減少し、2019年度(4月〜10月の平均)では約208万人だ。ここで注意すべきは高齢者の生活保護世帯が約90万世帯まで増加している。
(出典:ニッセイ基礎研究所

幸せにつながる4つの因子

幸福学を研究されている慶應義塾大学大学院の前野先生によると、幸せにつながる因子には、次に示すような4つの因子があるという(出典)。国民一人一人が自信とプライドと志を持って前を向いて明るく生きていくことがウェルビーイングの改善につながるのだと思う。

「自己実現と成長」因子

一言で表すと「やってみよう」という因子。自分の個性を社会で生かしながら、「やりたい・なりたい」をかなえていき、充実感のある成長を得ることを表しています。お金や地位を目標にせずに、自分を社会の中で成長させることで幸せを得ていくというものです。

「つながりと感謝」因子

つながりについてはいろいろな職業・年齢・性格の友人がいる人の方が、そうでない人よりも幸せという傾向があります。また、社会貢献活動に関わっている人の幸福度が高いという内閣府の調査結果もあり、誰かのために何かをする関係づくりが、幸せとして自分に返ってくるのだと考えられます。

「前向きと楽観」因子

楽観的で気持ちの切り替えが上手く、外向的で出来事をポジティブに解釈するなど、どんな状況にも最終的には「なんとかなる」と感じられる方が幸福という考えです。怒りやイライラに支配されそうになったら、自分が置かれている状況を客観的に見つめ、感情の原因にどう対処するかを考えると、気持ちが切り替わりやすくなります。

「独立とマイペース」因子

自分は自分と考え、他の人がしていることは気にせず、目標に向かって淡々と進めていくこと。これを実現するには、自分の軸を明確にして、誰にでも心を開くことのできるオープンマインドが重要になります。恥ずかしさにとらわれず、自ら楽しもう、面白がろう、やる気を出そうと率先して取り組んでいくことで、自分らしいやり方を確立できます。

まとめ

経済成長か国民の幸福かという2択問題ではない。しかし、高度成長期には経済成長の結果国民の幸福度も高まった。経済成長が厳しい現状でもさらに経済成長を目指すのか、それとも国民の幸福や充実度に舵を切るのか。最低なのは、経済成長と国民の幸福のどちらも低下することだ。コロナ禍での対応は難しい判断となるけど、これからは国民充実度を高めるという公約では選挙を戦うのは厳しいのだろうか。政治は読めないけど安倍派と麻生派が支持すれば初の女性総裁もあり得るかもしれない。総裁に選ばれた人は勇気を持って正しい舵取りをして欲しいと思う。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

雑談:自民党の新総裁
自由民主党の総裁選挙の実施が決まった。現職の総裁が立候補しないため、新総裁が誰になるかが注目を集めている。岸田氏はスタートダッシュには成功したが本命となるか。石破氏は白紙を貫くか。河野氏に任せて大丈夫か。高市氏なら初の女性総理だ。下村氏は表明していないが、今回の国内総充実(GDW)の提唱者だ。著書を改めて読むと苦労人だったけど、基盤が弱い。今回はパスか。

(出典:テレビ朝日

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