脳型情報処理機械論#12-3:石津准教授による神経美学を受講。興味深い内容だった。

はじめに

第12回脳型情報処理機械論の講師は、関西大学の石津智大准教授だ。石津准教授のプロファイルなどは先に投稿したので割愛するが、教材も説明も明瞭で学生の質問にも丁寧に答えて頂けた。なんとなく人間味や暖かさを感じる人柄なのは先の写真で感じた通りだった。ただ、英語の講義であることもあり、基本的な知識をまずインプットしようと、参考図書をざっと読んで感じたことを前回投稿した。

その1:美の認知神経科学の予習(前々回
その2:参考図書のざっと読み(前回
その3:美の認知神経科学の概要(⇨ 今回)

講師の紹介

詳しくは前々回の投稿に記載した通りだけど、本格的に認知神経科学に取り込まれたのは、2009年から2016年のロンドンへの留学がきっかけのようだ。2016年から2018年にはオーストリアのウィーン大学で芸術と美学の心理学を学び、再び2018年から2020年までロンドン大学でNeuroaesthetics(神経美学)を学び、日本に戻って現在は関西大学と京都大学の准教授を務めるホープだ。

書籍の紹介

英語の図書6冊と日本語の図書6冊を紹介いただいた。まずは理解を深めるために日本語の図書をざっと読みした。その内容は別に投稿したので割愛するが、芸術と脳科学は全く別物であるように思われがちだけど、科学技術の進歩によって、芸術と脳の関係もかなり明確になりつつあり、片方を深掘りすることで他方の新たな知見を得るという相乗効果も期待できる関係にあるようだ。


(出典:講義資料より)

今回のコンテンツ

神経美学(Neuroaesthetics)は、新しい学問分野だ。石津准教授はまさにこの分野でのパイオニアと言える。芸術、音楽、または美的感覚を引き起こすあらゆる美的知覚の研究を科学的なアプローチで研究するものだ。青い円は芸術に関する研究で、オレンジ色の円は認知神経学だ。美の認知神経科学(Gognitive Neuroscience of Beauty)はオレンジの円の中で青い円にも少しかかるイメージだ。
(出典:講義資料より)

神経美学とは

美学研究と芸術

神経美学は、美学を工学的に研究する学問と言える。このため、美とは何か。芸術とは何かという疑問を脳の働きを最新技術を活用して評価する活動を通じて研究するものと理解した。

美は多様な概念

美しいものに人は惹かれる。なぜだろう。きっとそこには必然性があるのだろう。参考文献では黄金比で皮質の活動が活発になると書かれていた。食欲や性欲も生存のための報酬系と理解できる。美にもそのような意味があるのかもしれない。つまり、外面的なことだけではなく、内面的にも優秀な遺伝子を有することが美に繋がるということもあるのだろうと思う。講義の中ではなぜ美を研究するかという問いに対して、経済的な効果や善良さ(goodness)、数学的な真実(mathematical truth)などに言及し、人間の本質に根ざしたものとされた。美は贅沢・嗜好ではなく、必需・必須なものであるという説明があった。これに続いて、ポジティブな美とネガティブな美について説明があった。

ポジティブな美

視覚的な美しさと音楽的な美しさ

個人的には、ルネ・フランソワ・ギスラン・マグリット(René François Ghislain Magritte, 1898年11月から1967年8月)の不思議な創造的な作品が好きだ。ルネはベルギー出身のシュルレアリスムの画家だ。シュルレアリスムとは、作家アンドレ・ブルトンが「理性による監視をすべて排除し、美的・道徳的なすべての先入見から離れた、思考の書き取り」と定義したものだ。イノベーションは、常識や先入観を払拭するところから沸き起こるものと思っていて、その意味でも好きだ。好きな音楽は人それぞれだけど、音楽も、スポーツも、芸術も、人に感動を与えるようなものは、民族や国を超えて共感できる点が素晴らしいと思う。その意味では感動を与えるものは美と言えるのだろうか。

(出典:ルネ・マグリットの空の鳥)

内側眼窩前頭葉皮質(medical orbito frontal cortex)

眼窩前頭皮質(OFC)は、脳の前頭葉にある前頭前野の一領域で意思決定という認知過程に関与している。OFCは、前頭前野のうち視床内側背側核からの投射を受ける部分と定義される。目のある眼窩直上にあることからその名が付いた。人のOFCには個人差がかなりあるようだ。近年のfMRIなどの技術の発達で美しい絵画を見たり、美しい音楽を聞いた時の脳の反応を精緻に測定することが可能となっている。

ネガティブな美

ロミオとジュリエット

美には喜びの美もあれば、悲しみの美や悲哀の美もある。特に日本人は、儚さややるせなさ、無常観にも美を感じるのではないだろうか。講義ではロメオとジュリエットを引き合いに出して説明いただいた。やはりロンドンと言えば、シェイクスピアだし、シェイクスピアといえばグローブ座を現代に再現した劇場「シェイクスピアズ・グローブ」が1997年に開館しているので、石津准教授はご覧になっていたのかもしれない。
(出典:courrier)

感情と表情筋

最新脳科学でわかった五感の驚異」では、「自分の表情が自分の感情に影響を及ぼしている」ことに言及があった。楽しいから笑うのではない、笑うから楽しいのだというのもこの意味だろう。悲しい表情をしていると悲しくなる。そんなことも工学的に検証されているようだ。

機能的ニューロイメージング

機能的ニューロイメージング(Functional neuroimaging)とは、ニューロイメージング技術を利用して脳機能の一側面を測定することだ。多くの場合、特定の脳領域の活動と特定の精神機能との関係を理解することを目的としている。特に、認知神経科学、認知心理学、神経心理学、社会神経科学の研究ツールとして使用されている。

まとめ

美を科学するのが神経美学だろう。どういう時に美を感じるのか。美を感じると人はどういう行動を起こすのかがわかれば、行動を起こしてもらうための仕掛けを作ったり、プロモートしたりすることも可能だ。最近では、若い女性が美容整形を行う人も増えているようだが、男性の利用者も増えていると聞く。聞かれても絶対に言いたくないという人は2割程度だという。人の表情はその人の生き様が反映する。外見をよくすることも大事かもしれないけど、それよりももっと内面を鍛え、育てることの方が大事だと思うが古い考えなのだろうか。

(出典:PR TIMES)

以上

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