労働安全衛生法:「計画」を考える。

はじめに

労働安全コンサルタントの試験科目は3科目ある。専門技術は技術士なら免除なので、安全法令と安全一般の2科目だ。特に、トリッキーなのが安全法令だ。その基本である労働安全衛生法は、労働災害を防止するための法律であるが、それだけではなく、労働者の安全と健康を確保し、より快適な職場環境を形成することが目的だ。

(目的)
第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

労働安全衛生法の構成

労働安全衛生法をしっかりと読んだことのある人は多分少ないだろう。自分もしっかりと読んだかと言えば、まだ斜め読みだ。難関な表現やクドイ表現や参照していて完結していないので、文字だけ読んでいても理解できない。労働安全衛生法の全体構成を分かりやすく示す図表があったので、参照する。

出典:https://slidesplayer.net/slide/11438547/

元方事業者と関係請負事業者

労働安全衛生法では、発注者から請け負う元請事業者を元方事業者と呼び、元請事業者からの発注を受ける下請負事業者や孫請け事業者を総称して関係請負事業者という。法律というか、省庁によって用語が異なるのは必然性があるのだろうが、慣れるまでは分かりにくい。

出典:1-1 事業者責任と安全衛生管理|(財)中小建設業特別教育協会

元方事業者と関係請負事業者の役割分担

元方事業者がまずすべきことは安全衛生管理計画の作成だ。それ以外にも過度な重層請負の改善とか色々ある。しかし、例えば建設業で何か大規模な工事を請け負っても一社でやれることは少ない。それぞれ専門分野の会社の専門家の協力を得ながら進める必要がある。その意味では、最も重要な元方事業者の役割はオーケストラの指揮者のように、それぞれの演奏奏者の演奏をしっかりと把握し、ポイントとなるところでしっかりと指揮をし、それ以外は演奏奏者の力量に任す。そんなオーケストレーションの機能かもしれない。

出典:1-1 事業者責任と安全衛生管理|(財)中小建設業特別教育協会

オーケストレーション

日本語で言えば、管弦楽法だ。最も合理的かつ効果的な方法を用いて管弦楽団で表現する手段だ。コンピュータの分野では、複雑なコンピュータシステムの配備、設定、管理を自動化する用語だ。オーケストレーションは、分散処理システムを統一的に制御する姿を管弦楽団に重ねて用いるバズワードだ。

出典:https://thinkit.co.jp/article/9701

計画の届け出

労働安全衛生法(以下「法」)の中の計画関連で最も出題される頻度の高いのは第88条だ。

労働安全衛生法の一部改正

2014年(平成26年)6月に法の一部を改正する法律が成立し、交付された。当初は、2と3と6の法案を国会に提出したが、審議されることなく衆議院が解散して、悲しい廃案となった。その後、2013年(平成25年)2月に第12次労働災害防止計画で指摘された課題等の見直しを行って成立した。

出典:労働安全衛生法の改正について/2014年9月号

特別安全衛生改善計画と安全衛生改善計画

労働災害をなくすことが労働安全衛生法の目的だ。しかし、労働災害はなくならない。ましてや重大な労働災害が発生した場合には大変だ。先の多摩地区で発生した火災事故などは重大な労働災害となる。重大な労働災害とは「死亡災害」が発生したもの、もしくは負傷又は疾病により労災保険法施行規則別表第一の障害等級1級から7級のいずれかに該当する障害が生じたもの又は生じるおそれがあるものとある。そして、そのような重大な労働災害の再発を防止するために事業者に求められるのが特別安全衛生改善計画だ。いかに条文を引用する。バックが薄いブルーが(労働安全衛生)法、淡いオレンジが労働安全衛生規則だ。


まとめ

労働災害を撲滅するにはどうすれば良いのだろうか。そもそも危険がないようにする本質的対策と、危険を軽減する機能安全と、残ったリスクを共有する情報共有の3つが重要だという。最初の本質的安全とは、例えば潜函作業を人手で行うのではなく、すべてリモートで行う方法を採用することだ。それでも危険がゼロにはならないが、少なくとも海底の高圧なスペースで掘削作業をするような危険な作業を回避することができる。機能安全とは、リスクを軽減したり、回避できるような仕組みを導入することだ。先の潜函作業であれば、連絡用の電話等の手段を用意したり、減圧の仕組みを用意して潜水病が発症しないようにすることだ。最後の情報共有は、どうしても残るリスクを特定するだけではなく、それを関係者で共有することが重要だ。そんな3つの対応をしても、最後に安全を守るのは現場力だ。工事現場に立ち会うときにいろいろな専門職の方がたとお会いするが、心優しい人が多い。外人労働者も私が対応する案件ではほとんどいない。まだまだ、専門職の匠の技に頼っている部分が多いためだろうか。安全のための計画を考えると悩みは尽きない。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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