サイバー攻撃は1秒回に1万回以上。リアルの被害に直結しかねない危機的状況だ。

はじめに

幕張の5G・Iot通信展を訪問した時に感じた「5G/IoT通信展で印象に残った7つの展示と講演会での7つの新技術」は以前投稿した。そこでも記載したが、ある展示会のブースでなぜ日本はもっと軍事無線の技術に投資をしないのかという話になった。例えば、万一某国が自国向けにミサイルを発射したら、そのミサイルの遠隔制御をハッキングして、発射場所にUターンさせるような軍事技術を確立すれば、大いなる抑止力となるだろうという話になった。実現性や現実性は別にして検討すべきアイデアではあると思った。リアルな世界での戦争はなかなかできないけど、サイバーの世界での戦争は日々行われている。そんな状況を今日はレビューしてみたい。

日本へのサイバー攻撃の推移

日本へのサイバー攻撃は、2018年には2121億件と2009年の35.7億件に比べると9年で約60倍に増加している。さらに2020年には5,001億件と前年度の1.5倍に増加している。この調子で増加すると2022年には1兆件を超える見込みだ。年間5000億件だと1秒間に1万5,854回のサイバー攻撃を受けていることになる。これはもうとんでもない頻度だ。これほど執拗なサイバー攻撃に防御する仕組みが、例えば、WAFだ。WAFとは、Web Application Firewallの略であり、ウェブアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃からウェブアプリケーションを保護するセキュリティ対策の一つである。下の図(右)に示すように、ファイアウォール(FW)でブロックし、侵入防止システム(Intrusion prevention system:IPS)で不正侵入の兆候を検知し、検知した不正を自動的に遮断する。さらに、WAFで保護する。Webアプリケーションファイアウォール(WAF)は、従来のFWやIPSでは防ぐ事ができない不正な攻撃からWebアプリケーションを防御する仕組みだ。
(出典:PR Times)

日本を狙う国は中国からロシアへ

2016年10月の時点では、日本にサイバー攻撃を仕掛ける国の約2割が中国発信だった。2016年に流行したのは、IoT機器などに感染する「ミライ」ウイルスだった。2019年にはオランダからの攻撃が急増し、9月には3割以上を占めた。2020年6月にはロシア発がトップに躍り出た。世界的な基準に対して倫理的な規制が緩いサーバーが狙われる。いわば踏み台としてなるサーバーを見つけ、そこから攻撃を仕掛ける。大事なことは発信国の背後にいる司令塔を見つけることだ。

(出典:日本経済新聞

新領域の対応

サイバー攻撃の領域は宇宙に広がっている。どういうことかといえば、ある敵国が日本に対してサイバー攻撃を仕掛けたら、対抗電波をその敵国に放射することでサイバー反撃するという図式だ。すでに、政府はサイバー攻撃に対抗する能力の保有について検討する方針を固めている。12月に改定する「防衛計画の大綱(防衛大綱)」では、防衛力の果たすべき役割のうち「あらゆる段階における宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応」の考え方として、次のように定めている。

平素から、宇宙・サイバー・電磁波の領域において、自衛隊の活動を妨げる行為を未然に防止するため、常時継続的に監視し、関連する情報の収集・分析を行うとともに、かかる行為の発生時には、速やかに事象を特定し、被害の局限、被害復旧などを迅速に行う。また、わが国への攻撃に際しては、こうした対応に加え、宇宙・サイバー・電磁波の領域を活用して攻撃を阻止・排除する。さらに、社会全般が宇宙空間やサイバー空間への依存を高めていく傾向などを踏まえ、関係機関との適切な連携・役割分担のもと、政府全体としての総合的な取組に寄与する。


(出典:朝日新聞

防衛分野における電磁波領域

防衛分野において用いられる電磁波は幅広い。下の図に示すように、通信やレーダで用いられるマイクロ波、ミサイルの誘導を行う赤外線、偵察衛星で用いる可視光線、さらに電磁波の増幅・放射を行うレーザなどがある。敵を発見するレーダーや、ミサイルの誘導などに使用されており、電磁波領域における優勢を確保することは、現代の軍事作戦において必要不可欠なものになっている。電磁波領域を利用して行われる活動には電子戦と電磁波管理があり、電子戦の手段や方法は一般的に、「電子攻撃」、「電子防護」及び「電子戦支援」の3つに分類される。

(出典:防衛白書

ダミーとデコイ

電子攻撃機の運用イメージ

「日本への侵攻を企図する相手方のレーダーや通信等の無力化」を可能にする電子攻撃機の開発は急務だ。閣議決定した防衛計画の大綱の内容を具体化させ、自衛隊は来年度から開発に向けた作業を本格化させる。具体的には、航空自衛隊の輸送機「C2」と海上自衛隊の哨戒機「P1」に電波妨害装置を搭載した型を開発する方向だ。C2を基にした機種は2027年度の導入を目指している。P1については開発スケジュールを含めて検討する。P1は操縦の制御に、妨害電波の影響を受けない光ファイバーを使用している。電気信号を使う他の航空機に比べ、電子攻撃機として高い能力を発揮することが期待されている。電子戦の装備はすでに自衛隊の艦艇や航空機に搭載されているが、ミサイル攻撃を受けた場合、妨害電波を出して方向をそらすといった防御面に重点を置いている。これに対し、新たに開発する電子攻撃機は、空中で広い範囲に妨害電波を照射し、相手の航空機や艦艇などをつなぐ通信ネットワークやレーダーを無力化させ、戦闘ができない状態に追い込むことを狙っている。

(出典:ameblo)

自衛隊の電子戦能力を強化

防衛省は、電磁波を使う電子戦能力を飛躍的に高めるため、相手の電磁波を攻撃できる装備を導入する方針を2018年12年に固めている。航空機や車両に搭載し、相手の情報通信ネットワークの分断やGPSのような衛星利用測位システムによるミサイル誘導の妨害などを担う。中国やロシアによる電磁波攻撃の脅威が高まる中、自衛隊が作戦を行う上で相手の作戦を妨げる攻撃能力の保有は不可欠だ。

(出典:poverty)

妨害電波監視の共同システム

中国や北朝鮮からの妨害電波の狙いは成田空港を離着陸する航空無線の混信を狙ったとみられるものが複数回確認されている。 日本政府は中国に対しては直接、排除要請しているほか、国交のない北朝鮮に対しては国連の国際電気通信連合(ITU)に通報するなどの対応を取っている。成田空港は、他の周波数に切り替えて航空機と通信し、実害を免れている。両国からの妨害電波は、遠洋漁業の船舶無線に対しても混信などの悪影響を及ぼす恐れがある。これに対して新監視システムをベトナム、フィリピン、インドネシアの3カ国と連携しながら整備を進めている。これまで南シナ海を航行する船舶や航空機が妨害電波を受けても、発射源を特定することは困難だったが、新システム導入で詳細な発射位置の把握が可能になると期待されている。

(出典:blog)

まとめ

海外からのサイバー攻撃が2020年の平均として、1秒間に1万5,854回も受けているというのは尋常ではない。しかも、発信国は特定できても、その多くは踏み台とされているサーバー群なので、実際の司令塔を特定することは重要だ。さらには、中国や隣国からは成田空港の飛行機の離着陸を妨害するような電波も確認されているという。もし、これが原因で離着陸が失敗したら大変な事態となる。サイバーの世界での戦いは、リアルでの被害に直結する寸前だ。これに対抗するための措置は待ったなしだ。ベトナム、フィリッピン、インドネシアなどと連携して妨害電波を監視する仕組みを整備しているが、守りだけにとどまらず、反撃までの対応が必要だ。子供のいじめの構図と同じで、いじめられても反撃しないと陰湿なイジメが継続する。倍返しするような子供にはいじめはしない。国防は難しい問題だけど日本の国土と国民を守るために政府はしっかりと対応してほしいと願うしかない。

以上

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