和を持って尊しとする日本の戦略と、ビートオアジョインで戦略的に対応する欧米

はじめに

ダイレクト出版が発行するルネッサンスの2021年6月号を読んでいて、「ナニワの激オコおばちゃん」が紹介されていた。このブログを書いているのはおばちゃんではなく、小松敏行さんという博報堂出身のおじちゃんだった。その着眼点や切り口がユニークで鋭いので1日に約1万件のアクセスを誇っている。ジャンルも安全保障から 財政問題、コロナ対策、憲法改正や皇室まで幅広い。ただ面白いだけではなく、そこに日本及び日本人への愛情を感じられる。そんなブログを読みながら日本と欧米の価値観の違いを考えてみたいと思った。

(出典:ナニワの激オコおばちゃん

17条憲法

日本国憲法第17条ではなく、聖徳太子が西暦604年(推古天皇12年)に制定したという十七条の憲法だ。日本書紀にも明確に記録として残っている日本最古の憲法とされる。シラス統治に基づき政治執行者に対する規律を定めたものと言える。シラス統治とは、最高権威(=神)が存在し、民衆は神の大御宝(おおみたから)であり、その統治を神が権力者に信任するという構図であり、日本の国体だ。これに対するのがウシハク統治だ。ウシハク統治とは、権力者が権力関係に基づいて民衆を統治するものだ。

(出典:ワラウクルミ

和を以って貴しとなせ

17条の憲法と言えば、「和を以って貴しとなせ」が最初の第1条にあり、有名だ。しかし、これは仲良くしなさいという意図ではない。大事なことはオープンに議論して決めましょうという意図だと小名木善行こと「ねずさん」は指摘する。そしてこの精神は1868年(明治元年)に明治天皇が天地神明に誓約した五箇条の御誓文に反映しているという(出典)。参考に17条の憲法を平易に意訳したものをいかに示す。
1) 和を尊ぶこと
2) 仏教を敬うこと
3) 天皇に服従すること
4) 礼法を基本とすること
5) 訴訟は公平に裁くこと
6) 勧善懲悪を徹底すること
7) 自分の職務を守ること
8) 早く仕出し遅く退出すること
9) 信の義を根本とすること
10) 怒りは捨てること
11) 官人の功績と過失により賞罰を行うこと
12) 国司・国造は百姓から不当に税を取らないこと
13) 官史は自分の職務を熟知すること
14) 他人に嫉妬しないこと
15) 私心を取り去ること
16) 民を使うときは時節を考えること
17) 物事は独断で行わず議論すること
(出典:Trans.Biz)

ビートオアジョイン

沖縄に赴任した時に在沖米軍を担当した。その時に、非常に優秀だけど日本語ができない元米兵と、それなりに優秀だけど日本語のできる元米兵のどちらかを採用することになった。幹部で議論して、前者となった。仮にTさんと言おう。Tさんは確かに非常に優秀だ。グリーンベレー出身で文武両道を実践するイタリア系米人だ。何が優秀かと言えば人脈の広さとその交渉術だ。米軍にアプローチするときに、Tさんは将校レベルにも、現場のボスレベルにも、末端の担当にもコンタクトする。そして、それぞれの立場の意見をよく聞き出し、理解し、行動する。在日米軍が困っていること、やるべきこと、やれることを分析して提案する。上には下の意見を、下には上の意見をシェアしながら進める。すごいと思った。そんなTさんの口癖は「Beat or Join」だった。つまり、実力差があればやっつけろ!これが基本。しかし、相手との実力差がなければ無理に戦うのではなく協調する。孫氏の兵法に通じるような考え方だ。

(出典:ペーパーバック

力なき正義と正義なき力

これまでの覇権国は力でねじ伏せた。1533年にスペイン人のコンキタドールによって、インカ帝国は征服された。インカ帝国の先住民国家であったアンデス文明は紀元前7500年ごろに始まったと考えられているが、ほぼ完全に駆逐された。沖縄に残る縄算とインカの縄算の類似点は多い(参考)。ある国が他の国を制圧することは正義か悪かと言えば、勝てば官軍負ければ賊軍だ。力なければ征服されるだけだし、力だけでは暴圧となる。

(出典:ameba)

地球規模で必要な和の精神

太平洋戦争までは力の強い国が植民地を広げることが正義だった。しかし、地球は有限であるという認識が広がり、この地球というちっぽけな星で様々な人種の人類や、様々な動物や植物が生きていくには、和の精神が必要だと多くの人類が気づいている。しかし、それでも自己のメリット、自国のメリットを少しでも得ようと様々な努力をすることはもはや正義ではない。地球規模で考えるべきというのが現在の論点だろう。世界中の国と人々が平和に生きていくには、かつて日本が制定した「和を以って貴しとなす」の意味と有意性を世界に発信して賛同者や賛同国を増やす事は可能だろうか。

(出典:AAI)

まとめ

地球上の人々が平和な生活を継続するには、「和を以って尊しとなす」が重要と何度唱えても実現するものではない。やはり日本としての国力を高め、理念に賛同する国を増やし、連携することで世界を動かすことができるのではないか。ウシハク統治では権力者と支配されるものに二分される。世界の人々を宝とし、権威者が権力者に統治を信任するシラス統治を広げることは可能だろうか。それ以前に日本ではシラス統治の意味すら学校で教えない。まずは知ることが大事だと思う。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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