技術士試験にチャレンジする受験生は試験官の心に響く解答を目指したい。

はじめに

技術士試験二次筆記試験が7月17日(土)と18日(日)に開催される。総合技術監理部門が17日でそれ以外が18日なので、試験までは残り1ヶ月ほどだ。最後のラストスパートを後押しする意味から、受験者にエールとなる投稿をしたいと思う。

ロジックとイメージ

先週の日曜日にも一人受験者の論文添削をおこなった。その中でまず気になることはロジックとイメージだ。つまり、何が課題か、それをどのように解決するか、その成果と新たな課題とそれに対する対策は一連のストーリーを作り、それらが繋がっていることが重要でありあり、必要だ。一方、イメージとは、たとえば10mの橋の話なのか、100mの橋の話なのかで論点は全く異なる。小型の一人乗りの電気自動車なのか、大型バスなのかによって製造ラインは全く異なる。人は右脳と左脳を働かせて理解しようとする。イメージを示して右脳を理解させ、ロジックを示して左脳を活性化させると、人は納得したつもりになりがちだ。

(出典:IT Media

抽象化と具体化

相手に何かを伝えようとしたときに大事なことは抽象化と具体化だ。抽象的な一般論ばかりが書かれていると、書いている人が本当によくわかっているのか、わかっていないのかがよくわからなくなる。逆に具体的な言葉ばかり書かれていても、逆に細かすぎて全体が見えなくなる。なすべきは、最初は一般論として抽象的なことを示したら、次はそれを具体化する。具体的にはこのようなケースが問題になる。このような課題があると示す。そして、それに対する対策を考える上で物事の本質を突き詰めて抽象化する。そして抽象化したアイデアを具体的に説明する。このように抽象化と具体化を何度も繰り返すと説得力が増していくものだ。

(出典:IT Media)

マジックナンバー3

何かを聞かれた時に、その理由は3つありますとまず答えるのも方法だ。そして、3つありますと答えながら、3つの理由を考える。まあ、理由は通常1つではなく、2つでももなく、3つも4つもある。しかし、多くを挙げると覚えきれない。本当は4つも5つもあるのかもしれないけど、特に大事な理由を3つに絞り込み、それを丁寧に説明する。ただし、最近の技術士の説明は最初から解決策を3つ示せと提示される傾向にあるので、解決策は3つ示す。しかし、その成果も3つほど具体的に書くと説得力が高まる。ハレーションに対する解決策なども可能なら3つほど上げても良いし、倫理や持続可能性を示せと言われたら3つほど上げても良い。

(出典:家弓正彦Blog

一石二鳥を狙う

たとえば、昨年度の技術士試験の機械部門の必須科目では、課題3つを示し、そのうちの最重要課題に対する解決策を3つ示し、さらにその波及効果についての述べよとある。3つの解決策は最重要課題に対する解決策だけど、残り2つの課題に対しても一定の解決策になるのであれば、これは一石二鳥もしくは一石三鳥だ。なかなかこんな素晴らしい解決策は見つからないかもしれないけど、普段からアンテナの感度を高くすることでこのような画期的な解決策を提示することも可能だ。たとえば、太陽電池で言えば、ベロブスカイト太陽電池だ。以前にも何度か投稿したけど、非常に薄いので、軽量だし、壁やガラスも太陽電池にすることができる。しかし、耐久性に課題がある。CO2を吸収するコンクリートや地下に蓄積するCCSなども興味深い。EV用としては性能劣化した電池も一般家庭用の電池としては使えるだろう。そのようなエコシステムの提案なども魅力的だ。要は、自分の得意な土俵を作っておいて、それに誘導できれば勝ちだ。

(出典:スッキリ

3手先を読んで勝負

将棋でも一手先を考えるのではなく、三手先を考えてから打てと言う。この解決策を実施すれば、このような効果があるけど、逆にこのようなデメリットもある。それに対しては、このように対応すると言うところまで述べることができれば、その回答者は十分な課題解決能力があると採点者は多分考えるだろう。

(出典:いつつ

筆記試験は試験官とのコミュニケーション

文字を丁寧に書いたり、読みやすいように工夫することも重要だ。採点者も人間なので、やはり読みやすい解答、わかりやすい回答に高得点を挙げがちだ。口頭試験も筆記試験も試験官とのコミュニケーションだと思って取り組むべきだ。相手は、自分と異なる専門分野の技術者かもしれない、大学の教授かもしれない。どんな人かはわからないので、口頭試験ではいきなり専門分野の専門用語で捲し立てるのではなく、相手の理解を確認しながら、相手が理解できるように話していく必要がある。同様に、筆記試験でも誰でも同意するような一般的なことから書き始めて、徐々に自分の専門分野の話に持っていき、最後は見せ場を作って感動を与える。そんな作戦が成功すればA評価で合格だろう。

(出典:Helo! Coaching)

試験官が採点する時はまずは3つに振り分ける

相手の立場で考えることは重要だ。もし、自分が試験官だとして、数十人かそれ以上の受験生の解答を評価するとしたらどうするかと言えば、まずはA評価とB評価とC評価の3つのグループに仕分けするだろう。これは評価に値しないと判断したものはC評価だ。これは良くかけてそうだし、ちゃんと読みたいと感じるものはA評価だ。そして、その中間がB評価だ。技術士の筆記試験の合格率は部門によって異なるけど、だいたい10%程度だ。なので、もし振り分けた結果、A評価が15%ぐらいだとすると、本当にA評価に値するかという観点でA評価のグループの答案を精査するだろうし、逆に、A評価が5%ぐらいと少ない時には、B評価のグループから実はA評価に値するものはないかという観点で答案を精査するだろう。多少の入れ替えはあるにして、ぱっと見でA評価かなあと感じさせることが重要だ。

一味違う答案に向けての高度テクニック

では、A評価の答案とはどんな答案かと言えば、全部を読まなくても、タイトルとサブタイトルを見ただけで全貌を理解でき、そして丁寧に読みたいと思わせる答案だ。自分は、大事なポイントは図表にして答案用紙の右上に書くようにしているが、これも試験官が全ての文字を読まなくても見ただけで概略を理解してもらうようにするための工夫だ。

「はじめに」は最後に書く

これは自分の持論だけど、はじめにを書くかどうかは問題ではない。仮に書くと決めた場合には、その枠だけを決めて、確保し、論文を書いた後に、全体を見回して、何がポイントかを抽象化して、その内容をズバリ具体的に書く。電気技術者として、「EVの普及と環境保護を両立するための解決策としてEVのバッテリーを有効利用するためのエコシステムを提案する」とか、「既存のビルの建材を太陽電池の素材として活用する技術の有効性を示した」とか、採点者の心を掴むようなキャッチーなセンテンスを盛り込む。何事も第一印象が重要だ。筆記試験でも最初の2−3行の印象は非常に大事だ。

基礎力は技術ノート

合格するための答案を「仕上げる」テクニックは色々あるけど、それよりも重要なことは技術ノートだ。自分の専門分野を見回して、もしくは過去問を調べて必須のキーワードを100個ほど選び、それに対する技術ノートを作成する。自分はパワポのA4縦で技術ノートV1を作成した。一つのキーワードで一枚の技術ノートをまとめると大体900字ぐらいの内容となる。それを見ながら600字の解答用紙に課題や対応策や留意点を書く。そうすると技術ノートより解答用紙に書いたものの方がロジカルだったりするので、それを参考に技術ノートV2を作成する。今度は技術ノートを見ないで原稿用紙600字に同様に課題や対応策や留意事項を書く。そうすると簡単に書ける部分と書けない部分がある。書けないところは理解が不足しているか、知識が不足しているか、ロジカルでないかなので、それを参考に技術ノートV3を作成する。技術ノートを作るのには30分から1時間はかかる。原稿用紙に書くには30分。それを3回なので、1つのキーワードに2-3時間をかけることになる。それを百枚なので、200-300時間となる。試験までにその時間を捻出できるかどうかも鍵だ。

成功の秘訣は習慣化

毎日朝に2時間、夜に2時間、週末に8時間学習と週36時間の学習で200時間をこなそうとすると5.5週なので、1ヶ月半でも可能だ。しかし、週20時間で300時間をこなすには15週とほぼ4ヶ月必要だ。どのペースでやるかは人によるが、大事なことは習慣化だ。自分の場合は、会社の近くのジョナサンが朝6時半から営業するので、営業開始とともに入ってモーニングを頼み、食事を10分で終えたら、2時間集中して、8時40分にレストランを出て会社に向かう。会社勤務が終わったら、真っ直ぐに自宅に帰らずに最寄駅のスタバで2時間頑張る。平日はこれで毎日4時間を捻出した。最近ならテレワークも普及しているので、通勤時間に費やした分を学習に充てることも可能だろう。大事なことは習慣化することだ。習慣化することが学習を進めるための大きな成功要因だと思う。

まとめ

色々書いたけど、最終的に大事なことはやはりその解答を読んだ試験官の心に響くかどうかだろう。陳腐な解答とみなされてしまうのか、素晴らしい解答だと感心してもらえるのか、参ったと思わせるのか。たかだか三枚の解答用紙だけど、100人いれば100通りの回答がある。上位10%に残るには、普段からの地道な技術ノートの研鑽と、社会や技術の動向の把握、そして、斬新なアイデアと読み手(=試験官)に配慮した書き方をマスターしておきたい。技術士試験はゴールではなくスタートだ。技術士として活躍できるように書く力や話す力を養成する場と捉えて研鑽を積んでほしいと思う。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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