技術士の経営工学部門は、企業の経営を工学的に研究する意味からも有効だし、ぜひチャレンジしてほしい部門だと思う。

はじめに

昨日は技術士経営工学部門にチャンレンジした時のことを書いて投稿した。今回は、そもそも経営工学とは何か。技術ノートに整理したキーワードの体系化にトライしてみたい。

経営工学とは

2017年には技術士の経営工学部門にチャンレンジした。筆記試験の為に作成した技術ノートをもう一度振り返ってみたい。そもそも経営工学とはなんだろうという素朴な疑問にももう一度向き合ってみたい。英語ではManagement Engineeringとか、Industrial Engineeringであり、「人・材料・装置・情報・エネルギーを総合したシステムの設計・改善・確立に関する活動である」という。フレデリック・テイラーは経営工学の父であり、科学的管理法を研究したパイオニアだ。テイラー以前にも、コンピュータの父と呼ばれるチャールズ・バベッジが時間設定を始めていたが、一連の作業を分割し、それぞれの要素ごとの時間研究を行うという手法を確立したのはフレデリック・テイラーだ。現在の課題は評価基準の多様化だ。利益追求だけの観点ではなく、環境面の問題や、健康面への影響、倫理面など広い見識が求められている。

(出典:仕組み経営

経営の語源

そもそも経営とはなんだろう。紀元前8世紀に周の国の詩人が謳った「経之営之」が語源と言われている。「これを経しこれを営す」と読む。祭壇を築く時の言葉だった。土木工事の時にまず杭を立てるがそのような行為が経である。工事を始める前に外枠を決めるがそれが営だという(参考1)。つまり、経は、縦糸であり、道理を示し、変えてはいけないもの。営は横糸であり、時代の変化に合わせて変えていくものという説もある(参考2)。信念を持って変化に適応するのが経営の本質と言える。

IE(Industrial Engineering)とは

アメリカIE協会では、1995年に「IEとは、人・モノ・設備の総合されたシステムの設計・改善・確立に関するもので、そのシステムから得られる結果を明確にし、予測し、かつ評価するために、工学的な解析・設計の原理や方法とともに、数学・物理学・社会科学の専門知識と技術を利用する」と定義した。

日本インダストリアル・エンジニアリング協会の定義

アメリカIE協会の定義とほぼ同様だが、日本の協会では2008年に「IEは、価値とムダを顕在化させ、資源を最小化することでその価値を最大限に引き出そうとする見方・考え方であり、それを実現する技術」と定義した(出典:日本IE協会)。

経営工学と組織論と行動科学

初期のIEは効率性を高めることに主眼を置いたが、仕事を効率化するには最適な組織が重要ということで組織論が進化した。最近では組織を構成する個々人の能力をいかに発揮してもらうかという行動科学が進化した。下の図は、それぞれが密接に関係を示していることを示している。
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(出典:Me Consulting Group

技術ノートのおさらい

全部で150枚ほどの技術ノートを作ったけど、次のように生産管理、各種法則、経営管理、物流管理に分類されるものが多かった。これ以外にも金融工学がある。

その1. 生産管理

今回、チャレンジしているのは生産マネジメント分野、つまり生産管理は本丸だ。キーワードを並べると、最も多かったのが工程管理と品質管理だった。主に、工場での生産性を高めるような観点からの知見を問うものだ。筆記試験でも、「生産拠点を海外の新興国に移転する。QCDの観点から移転する理由とリスクを述べよ?」という問題があった。品質とコストと納期に関していかに競合他社に対する競争力を高めるかは生産管理の本質を問う良い問題だ。でも、600字の原稿用紙2枚では書ききれないし、そもそも工場経験のない自分では迫力の有る回答は難しいと判断して、別の問題(=損益分岐点分析)に回答した(笑)。最近は、生産ロボット技術が発展し、従来の産業用の垂直多関節ロボットに加えて、双腕ロボットとか、人型ロボットも活用され始めている。これに伴い、生産の前の設計段階の重要性が高まっていて、コンカレントエンジニアリングやフロントローディングの手法も注目されている。そんなことがこの生産管理の中で勉強したことだ。

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その2. 各種法則

経営工学の勉強をしているとxxの法則とか、xxの原則を目にすることが多い。皆様もご存知のことが多いかもしれない。使えそうな原則とか法則も多いので、ひとまとめにした。当時は、全国の学校を訪問して、生徒さんや先生、保護者にスマホやSNSの利便性とともにリスクを説明していたが、保護者や先生に話をするときはハインリッヒの法則を伝えるようにしている。子供たち自身にルールを考えさせること、そして、それを守っているかどうかを見守ることは重要だし、必要だ。でも、ルールを作ることよりも、子供たちがドキッとしたり、トラブルに巻き込まれた時に、保護者や先生に相談もできる環境や関係性を構築することの方が重要だ。ルールを厳しく指導しすぎると問題が水面下に埋没する。一方、ルールを緩くすると問題が起きるかもしれない。そんな複雑な問題だということを理解することが大切だと思う。
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その3. 経営管理

品質を高めるには、統計的な手法は有効だ。自分が受験した筆記試験でもX-R管理図を用いた解法と見識を問う問題が出た。他にも、QCD+E(環境)に対するPDCAやLCA(ライフサイクルアセスメント)を問う問題が出た。どの問題にするか苦慮したが、鮮やかな正解を見つけられば高得点を得られるはずとX-R管理図の問題を選択して、実際にグラフにプロットしたら、期待通り出題者の狙いが見えてきた。つまり、上限値と下限値の間にあり、一見問題はないようだが、一定数以上が平均値の上もしくは下に続くものを「連」と言い、これが7つも続いていた。これは危機的状況ですぐに対処が必要なので、その点を訴求したら、期待通り評価Aだった。この問題を選択してよかった(ホッ)。

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その4. 物流管理

経営工学には、生産マネジメント、サービスマネジメント、ロジスティクス(物流)、数理・情報、そして金融工学の5つの分野があった。自分は生産マネジメントを選択したが、物流関係のキーワードも結構頑張って整理した。なぜなら、技術士試験を受験するときに提出する受験票には、5つの経歴と共に、そのうちの1つの業務の詳細を720文字で説明する必要がある。ここで技術士としての知見と経験と能力をアピールする必要がある。受発注業務や在庫管理業務も生産マネジメントの範疇だということで、自分が担当した需給の業務について記載することにした。発注方式には、定量発注方式と定期発注方式やダブルビン方式がある。また、見込み発注方式と受注発注方式がある。携帯電話を法人のお客様に提供するために必要な端末を発注する業務だが、3つの課題があった。年度末の在庫を最小限にすること(不良在庫ゼロ)、受注案件を確実に納品できること(欠品ゼロ)、そして営業担当からのリアルタイムでの在庫照会&確保処理への対応だ。また、需給業務では、在庫管理責任も問われるので、物流センターとは密接に連携したので、物流業務の勉強にもなった。着任当初は営業担当から要請されるままに端末発注をしていたら、案件が見送りになったり、台数が下方修正されたり、納品時期が延期したりして、不良在庫が蓄積し、50億円近い特別損失を計上する危機に瀕した。これは大変だと、年度末の在庫を縮小すべく締め付けるが、年度末は営業担当にとっても商談をクロージングする重要なタイミングだ。年度末在庫はゼロにはならないが、ゼロにするつもりで、もうギリギリのやりくりを営業担当とギリギリ行ったのが、今となっては懐かしい思い出だ。
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まとめ

受験生の皆様もフォーマットはそれぞれ個性があり、工夫しながら技術ノートを作成されていると思う。ただ、これらのキーワードはそれぞれ他のキーワードとの関係性を持つ。その関係性を明確にするには、体系化することが有効だ。筆記試験に合格したら次は口頭試験だ。頭の整理をする上でも、時間に余裕ができるそのタイミングで体系化にトライすることを勧めたい。まずは、目前に控えた筆記試験に集中しよう。

以上

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