エネルギー問題解決の決め手は日露間のLNG北極海航路かパイプラインか。

はじめに

エネルギー問題に対して「ロシアと日本を直接接続するパイプライン構想の有効性」について以前投稿した。日本のエネルギー制作における天然ガスの存在はますます重要になっている。温暖化の影響で北極海航路への注目も高まっている。ロシアとの関係は今後ますます重要になるだろう。

日本の発電の電源構成

日本の発電容量は図1に示すように約1兆kWhだ。その中で特に構成比の高いのは天然ガスで約37%だ(2019年)。

図1日本の発電の電源構成(億kWh)

(出典:Globe+)

天然ガスの輸入状況

天然ガスの輸入量は右肩上がりで上昇している。特に2011年3月11日の東日本大震災に伴い国内の原子力発電所の相次ぐ停止に対応するとともに、石炭や石油に変わるCO2排出量の少ない天然ガスの比率が増加している。ただし、天然ガスの輸入額は2014年の9兆円をピークに減少傾向にあり2020年の輸入額は3.6兆円だ(出典:財務省貿易統計)。

図2 天然ガスの輸入量の推移

(出典:財務省「日本貿易統計」

ロシアの天然ガス

ロシアでの天然ガス生産も右肩上がりだ。特に、2020年以降はサマル半島での天然ガス生産が急激に増加する見込みだ。ロシアトータルでは、図3に示すように、2008年の6,410億m3から2030年には8,850-9,400億m3に増加する見込みだ。

図3ロシアの2030年までの天然ガスの生産見込み

(出典:石油・天然ガス資源情報

LNGの北極海航路の可能性

ヤマル半島でのLNGは米国APCIのC3MRという冷却技術を用いて生産している。さらに独自技術を用いた第4トレーンも設置するようだ。新技術では電力消費量がAPCIの2割減となるが、外界温度が低いほど適用効率が高いようだ。いずれにせよ、ヤマル半島で生産したLNGは通常は図4の冬ルート(Winter route)で日本まで運ばれるが、夏の期間は北極海航路で日本まで最短で運べる。これを見越して、ロシアのエネルギー企業Novatek社は、砕氷LNG船を15隻を発注し、北極海航路への準備を進めている(出典:MS&AD)。

図4ヤマル半島のLNGの出荷航路のオプション

(出典:石油・天然ガス資源情報

パイプライン構想

ロシアの国内では天然ガスのパイプラインは文字通り生命線だ。そして、中国とロシアは図5の赤い線で示す約3千kmにわたるパイプラインである「シベリアの力」が稼働している。ロシア側はチャヤンダ・ガス田に加えて、コヴィクタ・ガス田までの第二ライン拡張を2023年に計画している。中国国内では上海までの延長を2024年に計画している。

図5 ロシアの天然ガスパイプライン計画

(出典:石油・天然ガス資源情報

日露間のLNG輸送ルート

ロシアの天然ガスの消費は、中国だけではない。韓国にはパイプラインルートとLNGでの輸送、日本にはLNGでの輸送を想定している。

図6ロシアの4大ガス生産地から日中韓朝への供給ルート

(出典:一橋大学ガスエネルギー研究会

日露天然ガスパイプ計画

樺太島のサハリンで生産する天然ガスを稚内、苫小牧、仙台、日立、鹿島を経由して東京まで繋ぐ。総延長距離1,500km、年間輸送量200〜250億m3だ。建設費用は約7,000億円だ。実現すると、LNGの輸送費の4割程度で輸送できるという試算もある。安定的なエネルギー供給が可能となることの意義は大きい。同時に、パイプラインと並行して、電力送電や情報通信網などのインフラも整備するなどの併せ技も有効だろう。

図7 日露天然ガスパイプライン事業計画概要

(出典:JPDO)

まとめ

エネルギー政策はポートフォリオが基本だ。CO2の排出抑制には、石油や石炭への依存度を下げる必要がある。原子力発電の再稼働も課題が満載だ。サハリンと東京を直接天然ガスパイプラインを接続するとエネルギー政策も対露政策も次の局面にステップアップできるのではないか。エネルギー政策は専門ではないけど、ワクワクする計画だと思う。

以上

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