塩分接種と血圧の関係は単純ではない。美味しい塩を適量取得して心身とも健康を維持したい。

はじめに

生命は海で育まれた。海水とは、塩分を3.5%程度含む水だ。子供の頃に金魚を飼っていたことがある。弱ってきたときに、少し塩を水槽に入れてあげると元気になった。調べると「塩水浴」と言い、金魚が弱った時には効果的だ。しかし、元気な時に塩を追加すると、金魚を守る粘膜が剥離して逆に病気にかかりやすくなる。今回は、そんな塩について考えてみた。結論は、やはり適当な塩梅が良いということだ。

塩とは

塩と聞くと塩化ナトリウムを連想するが、精製塩と食塩は区別して考えるべきだ。工業用の精製塩は99%が塩化ナトリウムだ。一方、食塩は塩化ナトリウムを主成分としながらも、カルシウムやマグネシウム、マンガン、ニッケルなどのミネラルを含んだものだ。塩事業法の第二条において「塩とは、塩化ナトリウムの含有量が百分の四十以上の固形物である」という。ただし、チリ硝石、カイニット、シルビニットその他財務省令で定める鉱物を除くとしている。塩は生命の源であり、ナトリウムが不足すると、疲労感、血液濃縮、食欲不信などを引き起こす。塩分は次の3つの役割を持っている。
1) 消化液の精製:食べ物を分解する消化液の生成に塩は必須だ。
2) 神経伝達:脳から指令を神経を通じて体中に伝える上で塩が必要だ。
3) 栄養の吸収:ブドウ糖やアミノ酸に分解され腸内で吸収される上でナトリウムが必要だ。

(出典:スッキリ

塩の種類

食というと赤いキャップの食卓塩を連想する。平成9年4月の塩専売法廃止に伴い塩専売制度は廃止され、塩の取引が原則自由化された。昔ながらの塩田による塩の生成で廃業に追い込まれてところも多いが、昔ながらの自然塩や天然塩を購入することができる。沖縄に赴任していた頃に、子供がアトピー性皮膚炎で悩んでいると相談すると、「沖縄の海岸で海水浴すればすぐに治るさ」と綺麗な海岸を紹介された。実際、すぐに治った。沖縄の塩は今も大好きだ。

(出典:グルメノート

塩の生成手法

塩には、天然塩、再生塩、精製塩などがある。天然塩は天日塩、平釜塩、岩塩、湖塩などがある。再製塩は海外の天然塩にニガリなどを添付する。精製塩は電気分解でナトリウムイオンを抽出して食塩を煮詰めて結晶化する。しかし、精製塩には、天然のミネラルなどを含まないため、食用には向かない。

(出典:グルメノート

塩分と血圧の関係

ニールス・グラウダル博士の論文(2014年にアメリカ高血圧学会誌に発表)によると、好ましい健康結果が出た塩分摂取量は、6.7gから12.6gだった(参考)。塩分が高血圧につながるという現在の空気感は、1954年のルイス・ダール博士(米国)の研究論文による。さらに、ジョージ・メーネリー博士(米国)が1972年に行ったラットの実験結果を元に「高血圧の犯人は塩分の過剰摂取」となったが、人間に換算すると毎日500g相当の食塩摂取なので乱暴な実験だ。元名古屋市立大学教授の青木久三氏は、メーネリー博士の実験では10匹中6匹は血圧が上がらなかったことを疑問に感じて研究し、塩分の接種が問題なのではなく、塩分の排泄と高血圧の関係を研究し、高塩分でも真水を飲んで体外に排出できれば血圧は上昇しないことを明らかにした。ロンドン大学は、1988年に米英日など32カ国で約1万人に調査を行い、1日の塩分摂取量が6gから14gの人では塩分摂取と高血圧に相関関係が見られないと結論つけた。しかし、一方で米国のDASH-Sodium研究では、食塩の摂取量が少ないほど血圧が下がるという結果も確認されている。食塩を1日1g減らすごとに高血圧の人は、上の血圧が1mmHg程、下の血圧が0.5mmHgほど下がったという。夜間高血圧の症状にも減塩の高圧効果は有効だという。降圧薬では血圧下がらない治療抵抗性高血圧の患者にも食塩制限は有効という結果があるようだ。

(出典:国立循環器病研究センター

本態性高血圧と二次性高血圧

高血圧には原因がはっきりしていない本能性高血圧と原因が明確な二次性高血圧がある。後者では原因が明確なので対処がしやすい。問題なのは、前者の本能性高血圧だ。なぜ高血圧かの理由がはっきりすれば、治療法や対処法も決まるが、原因を特定できないと治療も色々と試すしかない。

(出典:生活習慣病オンライン

本態性高血圧

高血圧とされる患者の90%から95%は原因がよく分からない本態性高血圧だ。成人に多く、全国に約783万人もいるという。血圧が上昇する原因は様々だし、運動中か休憩中かに依っても異なるし、朝昼晩と言った時刻でも異なる。季節によっても異なる。
(出典:浜松町第一クリニック

摂取量と血圧の関係

塩分と血圧に関係があるのかというと関係がある人とない人がいる。前者の関係がある人は食塩感受性高血圧とよび。ジョンミラー教授(米国)が1987年に正常血圧の男女82人に実施した研究報告では、1日塩分摂取量を9.2グラムから4グラムまで12週間減塩した結果、血圧値に変化のない人が53%、下がる人は30%、そして17%は逆に血圧が上昇した。つまり、食塩感受性高血圧の人が約3割となる。逆に塩分が減少すると血圧が上がるケースもあり、注意が必要だ。チャールズ・ヘネケンズ医師が1997年に高血圧気味の人を対象に長期間減塩食を与えた結果を発表した。これによると、6か月かけると収縮期血圧で2.9mmHg、拡張期でも1.6mmHg下がった。しかし、3年目には減塩食を始める前にリバウンドした。どうも、食塩と血液の関係は単純ではない。減塩は体に良くないという研究報告もある。塩分不足のリスクについて、前出・白澤氏は「塩の主成分であるナトリウムは、血圧を維持するために必要な栄養素です。また、高齢者ほど血圧を気にして塩分を控えがちですが、塩分不足により喉の渇きを感じにくくなって脱水症状に陥るケースがある。塩分摂取量の不足で認知機能が低下するという報告もあります。“減塩すれば元気で長生き”という風潮は改めるべきでしょう」と警鐘を鳴らしている。

(出典:ノート

血圧調整のメカニズム

食塩感受性高血圧のメカニズムをもう少し詳細に見ると「レニン」という物質がポイントだった。つまり、体内で血圧の低下を感知すると腎臓の傍糸球体細胞からレニンが分泌される。このレニンは血管を収縮させる「アンジオテンシン系」を活性化させて、血圧を上昇させる。同時に、アルドステロンやバソプレシンという物質の分泌を促す。これにより、尿などで体の外へ排泄されようとしていた水分やナトリウムを再吸収する。正常な状態に戻とレニンの分泌が低下するので、過剰な塩分は汗や尿で体外に排出される。しかし、このレニンの調節機能が低下すると塩分の体外への排出ができず血圧が高い状態を継続する。これが本態性高血圧の原因の1つと言われている。

(出典:浜松町第一クリニック

まとめ

以前はニラを取り上げたが、今回は塩をテーマにした。コロナ禍で82kgまで重くなった身体を76kgまでスリム化しようと日々体重を測っている。体重と体脂肪率を記録しているが、なかなか単調には減少しないし、リバウンドもある。今回のテーマの塩分と血圧の関係も単純ではない。塩分を控えると血圧が下がるケースが3割強ある一方で、5割強は関係なく、2割弱は逆に血圧が上がるという研究結果もあり、びっくり。体質もあるだろうし、体調や年代や風土、食事文化とも関係するだろう。少なくとも米国の研究結果を鵜呑みにするのではなく、自分自身が美味しいと思う範囲で、適量を摂取するのがベストなのではないだろうか。

以上

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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