遠隔医療その3:遠隔医療アプリは成長事業。国民の健康度向上と国民医療費の低減が重要かつ必要だ。

はじめに

遠隔医療について4回に分けて投稿しており、今回はその3回目だ。日本では、コロナ禍での特別措置として遠隔診療による初診が認められた。まだ挑戦段階だけど日本でも遠隔診療に向けた各種アプリが利用されつつある。日本の国民医療費はGDPの約8%まで増えている。日本および海外では特にスタートアップ企業が頑張って遠隔診療アプリを開発して提供している。延命ではなく、健康寿命を伸ばすにはどうすれば良いのか。そんなことを考えるヒントになれば幸いだ。

その1:遠隔医療の定義と傾向(回の投稿
その2:遠隔医療の課題(前回
その3:増大する医療費と使える遠隔診療アプリの動向(⇨ 今回)
その4:セキュリティと今後の可能性(次回

日本の医療費の推移

自民党総裁選挙に向けて4人の候補者がそれぞれの政策をアピールしている。高市早苗氏は国防費をGDP比を1%ではなく、2%に増額したいと訴求している。日本が独立国として存在するためには必要な金額だという。この2%が多いのか少ないのかは議論が必要だけど、国民医療費は現在GDP比は2013年度実績で8.3%だ。先進諸国の中ではこれでも低い方だというが、医療費の増加は止まらない。高齢化の進展に伴いさらに増加すると予測されている。先の投稿で記載したように「年齢階級別の一人当たりの年間医療費を見ると、60代前半では40万円、70代前半では60万円、80代前半では90万円、90代以上は120万円と60代以上で急激に増加する傾向」にある。財務省の調査によると「亡くなる1ヵ月前までにかかった医療費(終末期医療費)は1人当たり平均112万円」という。国民医療費の多くはこの終末期医療費の扱いという難しい問題に直結するという結果になっている。難しいのは、延命治療の是非とその判断だ。2012年の調査では「延命のみを目的とした医療は行わず、自然に任せてほしい」という回答が91.1%だったという(参考)。しかし、家族にすれば、できるだけの治療はしたいと考える。この辺りの葛藤が難しい問題だ。また、後期高齢者医療制度・高額療養費制度を利用すると医療費100万円の場合にも患者負担はわずか5万7,600万円だ。一方、「年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額」の調査によると、平均年金月額は14万4268円だ(出典)。もし、経済的な側面から延命を求める構図が医療費を増大させているなら早期に是正が必要なのではないだろうか。特に、スウェーデンでは実施しない「胃ろう」による延命措置が本当に患者にとって幸せなのかを慎重に考えるべきだし、高齢者に対する延命治療などの医療費の自己負担を1割にするなら、遠隔医療に対する自己負担を3割ではなく、1割にするべきではないだろうか。

(出典:JHPN)

日本での遠隔診療アプリ

遠隔診療向けのアプリについてはそれぞれに特化したスタートアップ企業が存在する。また、カテゴリーとしては遠隔化と高度化に分類できる。高度化の分野の技術支援は大学発や医工連携に期待されるが、海外プレイヤーが先行している状況だ。今回は、LEBER、CLINICS、LiveCallヘルスケアなどについて概観したい。

(出典:経済産業省)

遠隔健康相談アプリ(LEBER)

Leber(リーバー)は、株式会社リーバー(旧Agree)が提供する遠隔健康相談アプリだ。福島県会津若松市では、住民の健康不安の解消に向けてこのLeberの活用調査を2020年4月から2021年3月まで実施された。Leberはスマホベースのアプリなので、高齢者世帯には地域運営組織のスタッフがアプリの利用をサポートして乗り越えた。会津若松市では、人口減少に歯止めをかけ、地域をもっと元気にするために「スーパーシティ会津若松」に挑戦しており、Leberの利用を含めて遠隔診療の活用を図っている(出典)。株式会社リーバーは複数の医療法人と連携して医師と看護師が出張して施設内での集団抗原検査やPCR検査を実施できるパッケージを提供開始した。これは、学校で児童生徒等や教職員の新型コロナウイルスの感染が確認された場合に、保健所の調査を待たずに学級閉鎖や全校休校を判断できるというガイドラインを文部科学省が全国の教育委員会に通知(2021年8月27日)したことを受けての対応だ(出典)。
(出典:PR Times)

オンライン診療・服薬指導アプリ(CLINICS)

2009年6月に創業された株式会社メドレーが2016年2月より提供するオンライン診療・服薬指導アプリがCLINICSだ。2020年12月末時点で約2,300の診療所・病院に利用され、2021年4月現在の累計診察回数は約30万回となっている(出典)。かかりつけ機能を担う診療所やクリニックを中心に導入が進んでおり、地域医療の基本的な単位である二次医療圏の約70%をCLINICSオンライン診療を利用する診療所・病院でカバーしている。また、オンライン・セカンドオピニオンでの利用を中心に全国各地の大学病院や中核病院でも導入が進んでいるようだ。

(出典:PR Times)

オンライン診療システム(LiveCallヘルスケア)

2006年2月に創業されたスピンシェル株式会社は、オンライン接客ツール「LiveCall」や妊活支援サービス「SuguCare」などを提供していたが、オンライン診療に必要な予約から決済までの機能を揃えたオンライン診療システム「LiveCallヘルスケア」を提供している。さらに、集患をサポートする機能や、画面共有や通話転送などオンライン診療を効率化するオプション機能も提供している。また、新型コロナに対応して、新型コロナウイルスの相談窓口向けにLiveCallヘルスケアを無償提供すると2020年3月に発表した。対面による接触の機会を減らし,二次感染のリスクを軽減できると期待されている。各クリニックに合わせてログイン画面をカスタマイズする機能もあり、診療機関のためのシステムと言える。いわばオンライン診療システムのOEM版であり、狙い目が面白い。

(出典:Spinshell)

遠隔診療・健康相談サービス『ポケットドクター』

2000年に創業した株式会社オプティムは、コンピュータ・ソフトウェアの会社である。設立当初、デジタル放送向け配信サポートやインターネット広告に関する事業を展開し、2011年にはAndroidやiOS向けモバイルデバイスマネジメント(MDM)サービス「Optimal Biz」で急成長した。さらに、2016年2月にはスマホ・タブレットを用いた遠隔診療サービス「ポケットドクター」を発表し、シェアを広げている。医師のともの親会社であるMRT株式会社と、株式会社オプティムは、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策の基本方針に基づき、医療機関に対して、2020年2月末から2020年9月6日までポケットドクターの無償提供を開始した。ポケットドクターの特徴は次の3点だ(出典)。
特徴1:安心の機能。予約、診療、決済、医薬品配送までの機能を持つ。赤ペンで認識合わせ可能。
特徴2:高い導入稼働率。専門チームによるサポート体制。医療機関や患者向け情報提供。
特徴3:健康相談。診療行為だけでなく、医師への健康相談が可能。


(出典:OPTiM)

遠隔手術

Da Vince

遠隔手術の代名詞は、1995年に創立した手術ロボットメーカであるインテュイティブ・サージカルが開発する外科手術システム「Da Vince」だろう。世界シェア7割程度と圧倒的な地位を占めているが、ダヴィンチの特許の多くが2019年までには期限切れとなった。これに伴い国内外のメーカが参入を加速している。

ヒノトリ

下の写真(中)は、川崎重工業と医療機器メーカーのシスメックスの共同出資会社である「メディカロイド」が発売する手術支援ロボット「ヒノトリ」だ。日本向けにロボットの小型化や価格の提言で新規需要を狙う。

エマロ

下の写真(右)は、2014年に設立したリバーフィールド株式会社が開発する手術支援ロボット「EMARO」だ。ロボットアームの駆動に空気圧を活用し、手で触れている感覚を伝えるという。シンプルな機構で軽量コンパクト化が可能なため、ダヴィンチの中心機種の約半額を目指す。

(出典:ロボスタ)

遠隔手術の効果

日本の航空法では、構造上、その操縦のために二人を要する航空機などでは操縦する者を2人乗せると規定している。つまり、操縦士と副操縦士だ。医療の場合には、大規模な手術であっても基本一人の医者が手術する。しかし、遠隔手術を活用すれば、地方に勤務する若手外科医には難しい外科手術の場合に、熟練医の指導を受けながら高度な技術を習得することや、高難度部分は熟練医が行い、低難度から中何度の部分を若手・中堅の外科医が担当することも可能だ。これは外科医における人手不足の問題や若手医師の育成問題を解決する可能性があると期待される。

(出典:日経BP)

海外での遠隔診療の事例

遠隔投薬支援治療(Tele-MAT)

MAT(Medication Assisted Treatment)とは投薬支援治療だ。Tele-MATはこれを遠隔で実行しようというものだ。投薬支援治療(MAT)では、薬物使用障害の治療においてカウンセリングや行動療法と薬を併用して、全患者を対象にアプローチする。薬物療法と治療を組み合わせることは治療に役立つ。特に、MATはヘロインなどのオピオイドやオピオイドを含む鎮痛剤などの依存症の治療に用いられる。オピオイド使用障害および薬物中毒治療に使用される医療機器市場の年間成長率は16.86%であり、2027年末までに2,185万米ドルに増加すると予想されている。

遠隔栄養士サービス(TeleNutrition)

TeleNutritionでは、ビデオ会議や電話を利用して、栄養士や管理栄養士(以下、栄養士)によるオンライン相談を行うことである。顧客は、TeleNutritionポータルにバイタル情報や食事記録、食べ物の写真などをアップロードし、栄養士が顧客の健康状態を分析する。栄養士は、それぞれのクライアントや患者の目標を設定し、フォローアップコンサルテーションによって定期的に進捗状況を確認する。なお、日本における管理栄養士は、厚生労働大臣の免許を受けた国家資格であり、専門的な知識と技術を持って患者や高齢者、健康な方など一人ひとりに栄養指導や給食管理、栄養管理を行う。一方、栄養士は都道府県知事の免許を受けた資格で、主に健康な方を対象にして栄養指導や給食の運営を行います。

(出典:FB)

遠隔看護(Tele-Nursing)

遠隔看護とは、患者と看護師、あるいは複数の看護師の間に大きな物理的距離が存在する場合に、ヘルスケアにおける看護サービスを提供するために、ICT技術を活用することだ。遠隔医療の一部であり、遠隔診断、遠隔診察、遠隔モニタリングなど他の医療および非医療分野のアプリケーションと多くの接点を持っている。遠隔看護は、医療費削減への関心、高齢化や慢性疾患の増加、遠隔地や地方、小規模、人口の少ない地域への医療提供の拡大などの要因により、多くの国で大きな成長を遂げている。テレナーシングの利点は、増大する看護師の不足を解消すること、距離を縮めて移動時間を短縮すること、患者を入院させないことなどが大きい。遠隔看護に従事する人たちは仕事への満足度が高いことも特徴だ。日本でも、限定的だが、2018年より遠隔モニタリング加算が診療報酬に新設された。


(出典:医学書院)

遠隔精神医学(Tele-psychiatry)

遠隔精神医学は遠隔医療の一つであり、家族療法、集団療法、個人療法などの治療、精神医学的評価、患者教育、投薬管理などに対応する。遠隔精神科は患者と精神科医の間の直接のコミュニケーションを含む。また、メンタルヘルスケア相談で指定されたプライマリヘルスケア提供者を支援する精神科医も含まれる。Kenneth Researchの調査レポート「世界の遠隔精神医学市場:世界的な需要の分析及び機会展望2027年」によると、精神疾患、不安、ストレスのある患者は増加傾向にあり、自殺数も増加傾向にある。全米精神障害者家族同盟によれば2018年には米国市民の43.3%が精神疾患の治療を受けている。精神障害のある13〜18歳の若者の20%以上、11%以上の若者が気分障害を患っており、成人の約18.1%が不安障害を患っている。米国では、2018年から2027年の間に国民の医療費は年率5.5%で増加し、米国のヘルスケア業界の総支出は、2027年末までに約6兆米ドルに達すると予想されている。遠隔精神医学市場も2020年から2027年の間に、年率5.7%でさらに成長すると予想されている。

ハンズフリー授乳用Google Glass

Google Glassを活用した応用例の一つが、オーストラリアのハンズフリー授乳であり、2014年に報告冴れた。このアプリケーションはオーストラリア母乳育児協会とSmallWorldSocialという技術系スタートアップの共同開発だ。不慣れな母親が母乳育児の方法を学びながら実践する。母親がハンズフリーで母乳育児に関する情報や母乳育児の方法を得ることができるほか,GoogleHangoutを使って授乳コンサルタントに電話をかけて相談できる。試験終了時には参加者全員が母乳育児に自信を持っていたという。

(出典:日経Xテック)

遠隔リハビリ(Tele-rehabilitation)

遠隔リハビリ(Telerehabilitation)は、ICTやインターネットを活用してリハビリテーションサービスを提供することである。サービスは、患者の環境における機能的能力の臨床評価と臨床治療だ。遠隔リハビリが有望なのは、神経心理学、言語聴覚学、作業療法、理学療法などだ。遠隔リハビリなら、患者が障害を持っていたり、移動時間の関係でクリニックに行くことが難しくても治療を提供できる。

まとめ

今回は、遠隔医療のための各種アプリの動向に関して、日本のアプリの動向と海外での動向について調べてみた。また、前回にも触れたが、日本における医療費が40兆円を超えている。また、特に高齢者では「亡くなる1ヵ月前までにかかった医療費(終末期医療費)が1人当たり平均112万円」という。延命治療の是非は倫理の問題でもあり、経済の問題でもあり、悩ましいところだ。一方、遠隔医療に関するアプリはこれからの成長分野だ。普段からモニターして、定期的に診療し、データを蓄積し、問題が生じたら適切に対応する。そんなアプローチが普及したら国民全体の医療費も低減できるのではないか。そんな気持ちから投稿した。アプリの多くはスタートアップ企業が頑張っている。国内にとどまらず海外でも収益があげられるように日本の法規制の早期緩和が期待される。また、「三方よし」として、国民に良く、医療関係者にも良く、国にも良いような方向にぜひ進んで欲しいと思う。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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